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重要なお知らせ

プレスリリース

マテリアルズ・インフォマティクスによる新超伝導物質の発見(国立研究開発法人物質・材料研究機構との共同リリース)

1. NIMSと愛媛大学の研究チームは、データ科学で新物質を探索するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)※1の手法を用いて、圧力下で発現する新しい超伝導物質※2を発見することに成功しました。本発見は、マテリアルズ・インフォマティクスを活用して、効率よく新超伝導物質を発見できることを実験的に示したもので、この取り組みは超伝導物質に限らず、さまざまな機能性物質の開発に応用可能な手法であると期待されます。

2.超伝導物質は、ゼロ抵抗で電気エネルギーをロスなく遠方に輸送することが可能であり、環境エネルギー問題解決のカギとして期待されています。これまで、新超伝導物質をはじめ新物質の探索は、論文に掲載された結晶構造や原子価数などの情報をもとに、研究者の経験と直感によって進められてきました。そのため、関連した物質を絨毯爆撃のように網羅的に合成しなければならず、時間もコストもかかる大変困難な作業でした。そこで、より効率よく新物質を発見する新しい手法の開発が求められていました。

3.本研究では10万個以上の無機物質の結晶構造データが蓄積されているAtomWorkに着眼しました。まず、現実的に電子状態を計算可能な約1500個の候補物質群に絞り込み、さらにそれらの電子状態の計算を行うことによって超伝導に好ましい物質を27個選定しました。この27個のうち、実際に合成しやすい物質を研究者が選び、SnBi2Se4, PbBi2Te4という2つの物質に到達しました。
これら2つの物質を合成し、これまで開発してきた高圧力下の電気抵抗測定装置を用いることによって超伝導の発現に成功しました。さらにこの超伝導転移温度は圧力上昇に伴いより高くなることも発見しました。データ科学が主導となって固定概念にとらわれることなく超伝導が発現する物質を探索し、それをピンポイントで効率よく具現化できることを示した極めて新しい取り組みです。

4.本研究で発見した2つの物質は、新超伝導であるだけでなく、新しい熱電物質※3の候補ともなりえることが実験的に明らかになりました。本研究の手法を用いることで、超伝導のみならず様々な機能性物質の開発に応用できる可能性があります。今後は、対象物質の範囲を広げ物性発現に必要となるパラメータをより精密に導入し、例えば室温超伝導物質などの革新的な機能性物質の発見を目指します。

5.本研究は、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の高野義彦グループリーダー、松本凌(D2)学振研究員、統合型材料開発・情報基盤部門(MaDIS)のZhufeng Hou特別研究員、寺倉清之エグゼクティブアドバイザー、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター入舩徹男センター長らの研究チームによって行われました。また本研究の一部は、科研費(No. JP17J05926)「超高圧下電気伝導測定装置の開発と新規超伝導探索」、JST-CREST(No.JPMJCR16Q6) 「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」、愛媛大学共同利用・共同研究拠点「先進超高圧研究拠点(PRIUS)」の一環として行われました。

6.本研究成果は、応用物理学会の国際誌Applied Physics Express(2018年9月号)に掲載が決定し、Spotlight論文としてウェブ上に先行掲載されました。さらに、日本物理学会(9/10 @同志社大学)、国際会議eMRS(9/17 @ワルシャワ工科大学)、およびNIMS WEEK 2018(10/16 @東京国際フォーラム)で発表いたします。

プレスリリース資料はこちら(PDFファイル 566KB)

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