キラルな蛍光プローブによるアミロイドの構造多型分析
このたび、愛媛大学大学院理工学研究科の座古保教授らの研究グループは、佐藤久子研究員(プロジェクトリーダー、元大学院理工学研究科 教授)、ノルウェー科学技術大学(ノルウェー)、リンショーピン大学(スウェーデン)との国際共同研究により、蛍光プローブを用いてインスリンアミロイドのキラリティを分析する新規な手法について報告しました。
タンパク質は高温や酸性などの変性条件下で、アミロイドとよばれる、アルツハイマー病などの様々な疾患の原因とされる線維状の凝集体を形成することが知られています。一方、アミロイドには構造多型が存在することが明らかになっており、とくに近年、線維のねじれ方向が逆の、キラリティが異なるアミロイドが注目されています。例えば、インスリンは、異なるpHにおいて、ねじれ方向が異なるアミロイドを生成することが分かっていました。今回、キラル特性を有する蛍光プローブが、これらキラリティの異なるインスリンアミロイドに結合する際に示す光学的応答の差異を明らかにしました。キラリティは化学物質の性質を決める重要な因子であり、本研究により、アミロイドキラリティを蛍光プローブで判別するという、新規な手法への応用が期待できます。
また、本研究の主な結果は、学術交流協定校であるノルウェー科学技術大学のミカエル・リンドグレン教授が客員教授として理学部に滞在中、大学院理工学研究科の渡辺嵩大さんとの緊密な連携により得られたもので、国際交流の成果でもあります。
本研究成果に関する論文は、欧学術誌「ChemPhotoChem」に掲載され、オンライン版で公開されました(2024年9月22日(日本時間))。
論文情報
掲載誌:ChemPhotoChem
DOI:10.1002/cptc.202400225
題名:Spectroscopic Response of Chiral Proteophenes Binding to Two Chiral Insulin Amyloids
(和訳) キラリティの異なる2つのインスリンアミロイドに対する、キラルなプロテオフェンの光学的応答
著者:Takahiro Watanabe, Priyanka Swaminathan, Linnea Björk, Ayaka Nakanishi, Hisako Sato, Tamotsu Zako, K. Peter R. Nilsson and Mikael Lindgren
責任著者:座古保(愛媛大学)、ミカエル・リンドグレン(ノルウェー科学技術大学)