プレスリリース

コロラド高原の地下深部で「水を運ぶ鉱物」が融解―電子顕微鏡による解析で判明―

米国コロラド高原では、約2800万年前、沈み込んだファラロンプレートから放出された水を含む流体によって、地下のマントルが広く水和したと考えられています。この「グレート・ハイドレーション」は、地下深部の岩石を地表へ運んだ爆発的活動との関係が議論されてきました。しかし、深部で形成されたエクロジャイトが、爆発の起きる浅い場所まで、何によって運ばれ、どの程度加熱されたのかは十分に分かっていませんでした。東北大学、海洋研究開発機構、バイロイト大学、愛媛大学などによる国際共同研究チームは、米国コロラド高原のナバホ火山地域に産するエクロジャイト捕獲岩を調べ、ローソン石の分解に伴って岩石の一部が溶けたことを示す証拠を見いだしました(図1)。ローソン石は結晶中に多くの水を含み、沈み込むプレートとともに地球深部へ水を運ぶ重要な鉱物です。本研究は、この鉱物が急激な加熱のもとで融解反応に関与し、メルト(岩石が溶けた液体)が生じ、その後に冷えて固まった履歴を、微小な鉱物の集合体から読み解いたものです。

本成果は、2026年10月29日に岩石学の国際学術誌Journal of Petrologyに公開され、注目論文としてエディターズチョイス(Editor’s Choice)に選定されました。

発表のポイント

  • 米国コロラド高原のエクロジャイト捕獲岩から、水を含む鉱物ローソン石の脱水融解を示す痕跡を見いだしました。
  • 透過型電子顕微鏡(以下、TEM)などによる微細組織・結晶構造の解析と熱力学計算を組み合わせ、岩石が形成後に800℃を超える急加熱を受けたことを示しました。
  • 加熱と融解、急冷の記録から、沈み込んだプレートの断片がマグマによって地下の浅い場所へ運ばれ、その後、爆発的に地表へ到達したという二段階の上昇過程を提案しました。

論文情報

タイトル:Melting of a lawsonite eclogite xenolith in the Colorado Plateau: Micropetrological constraints on the Oligocene thermal pulse
著者:Ryo Fukushima 1,2*, Tatsuki Tsujimori 2, Nobuyoshi Miyajima 3, Sayako Inoué 4, Tiziana Boffa-Ballaran 3, Giacomo Criniti 3,5
1 海洋研究開発機構物質地球科学研究部門 高知コア研究所
2 東北大学大学院理学研究科地学専攻
3 バイロイト大学バイエルン地球科学研究所
4 愛媛大学先端研究院地球深部ダイナミクス研究センター
5 ミュンヘン大学地球環境科学科
*責任著者:海洋研究開発機構物質地球科学研究部門 高知コア研究所 福島 諒 ポストドクトラル研究員(日本学術振興会特別研究員PD)(研究開始時:東北大学大学院理学研究科地学専攻 大学院生)
掲載誌:Journal of Petrology
DOI:10.1093/petrology/egag092
URL:https://doi.org/10.1093/petrology/egag092

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愛媛大学先端研究院地球深部ダイナミクス研究センター
講師 井上 紗綾子