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最先端研究紹介 infinity

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2021.03.26
ロボット技術を活用して農産物の高品質・安定供給
社会連携推進機構 植物工場研究センター / 教授 有馬 誠一 / 専門:植物工場、農業機械学、農業ロボット工学

※記載内容は掲載当時のものです。

研究の概要

 各種センサを用いて植物の栽培環境情報、および生体情報に関するビッグデータを収集・分析し、その結果に基づいて栽培環境を制御することをSpeaking Plant Approach(SPA)と言います。愛媛大学 植物工場研究センターおよび農学研究科 植物工場システム学コースでは、これを実現し、安全で安心して食べられる食料の安定供給を確立するため、IoT、AI、ロボットなどの工学的な先端技術を活用しながら、①栽培環境制御技術、②植物生育診断技術、③情報収集を含めた各種作業のロボット化に関する教育研究を行っています。このSPAに関する技術は、近年、植物工場はもとより、露地栽培にもスマート農業と称して展開され始めています。

 これらのシステムを構築することによって、農産物を限りなく「4定(定時、定量、定品質、定価格)」に近づけることが可能となります。すなわち、いつでも同じ品質の農産物を同じ量だけ供給することが可能となり、その結果、これまで天候不順や気候の変動などにより乱高下してきた農産物価格を安定させることができます。

 これらの研究テーマの内、私が所属している農業機械システム工学教育分野では、各種作業支援機能を有した知能ロボット、省エネ型農業機械の開発、各種情報を基にロボットや機械の最適作業制御システムの構築など、農業を産業として支えるために必要な工学的技術やシステムの研究開発を行っています。

研究の特色

  • 農業にもロボットやAIを利用する時代がやってきます!

 光合成機能や蒸散機能、葉温などを測定する生育診断ユニット、害虫の発生状況をモニターするための害虫検知ユニット、これらの情報を基に害虫防除を行う防除ユニット、超音波によって花を振動させて受粉作業を行う受粉ユニット、そして収穫物の情報を収集しながら果実収穫する収穫ユニット、マルチオペレーションロボットは、これらの各ユニットを植物工場内を自律走行する走行ユニットに載せ換えながら自動で各作業を行います。収穫ユニットの果実認識部に関しては、現在、AIを使ったトマト果実の認識、距離センサを用いたキュウリ果実の収穫期判断について開発中であり、この内、キュウリ収穫ロボットについては、早期の実用化を目指しています。農業用マルチオペレーションロボットの実用化により、膨大な情報処理と作業を自動化するとともに、農産物の高品質・安定供給を実現させ、価格を安定化させることを目指します。

  • 害虫発生モニタリングシステムによる農薬使用量削減!

 安全で高品質な農産物を安定的に供給するには、ICT利用による情報化農業および総合的病虫害管理(IPM)の確立が必要とされています。IPMとは、害虫の天敵利用や物理的な防除手段を用いて、化学農薬の使用量を少なくするための手法です。これをより効果的に実現するには、害虫の発生状況を多地点・高頻度で把握する必要があります。物理的防除法である害虫捕殺粘着シートを用いて、害虫防除を行うとともに、このシートの写真を用いて、害虫の画像を機械学習させ、害虫の自動カウントと害虫発生状況を示す害虫マップの作成を行う、害虫発生モニタリングシステムを開発しています。この情報を用いて早期に対策すれば、害虫被害が抑えられます。

研究の魅力

 農業ロボットを研究開発するには。機構学、機械力学、機械設計、制御工学、プログラミングなどの工学的な知識のほか、作業対象となる植物の生物学的および物理学的な特性を理解しておく必要があり、また、人との協調作業が求められるため、人間工学的な理解も必要となります。すなわち、農業ロボットは幅広い分野を集約した装置と言えます。これらをうまく連携させて研究するには、最先端の技術も必要ですが、ローテクも必要であり、柔軟な発想力が求められます。これらの連携がうまく機能した時、これまで世の中にない商品が生まれることとなり、農業の活性化に貢献できたら非常にうれしいですよね。そう思いませんか?世の中に無いもの(完全自律した農業ロボット)を実現させることを夢見ながら、日々、学生と発想比べをしています。

今後の展望

 農業用マルチオペレーションロボットが現場で活躍する日が来れば、各作業の省力化はもちろんのこと、膨大な栽培環境情報、植物生体情報の自動収集とAIによる分析、きめ細やかな栽培環境制御および栽培管理が可能となります。すなわち、ICT、IoTおよびロボットによるハイテク化された生産システムの構築により、植物へより好適な環境を提供し、収穫量の安定的増加と高品質化が見込まれます。その結果として、大規模植物工場の経営を大幅に改善し、植物工場による野菜生産を拡大することができると考えています。これが農業のスマート化です。

 近い将来、わが国の農業を、従来の小規模家族経営から大規模企業経営(第二次産業化)に転換させるとともに、「ノウハウ」、「勘」に代わる「知的情報」に基づいた食料生産への展開を目指しています。このことが「成長産業(儲かる農業)」への第一歩になると考えています。

この研究を志望する方へのメッセージ

 この分野に必要な基礎知識は、物理学、生物学、そしてデータを分析するための数学です。特に物理は、これまでに無い機構やアルゴリズムを発想するためにも重要な基礎知識と言えますが、「たくさんの公式があって、計算ばかりしていて難しそう。」って思っている人が多いと思います。公式は覚えるのではなく理解することが重要です。我々が生活していて目に見えて変化がある現象のほとんどは物理現象ですし、身近にあるある電化製品のほとんどで物理現象が利用されています。非常に身近な学問なのです。野球でピッチャーが投げるカーブやフォークボールは、なぜ曲がったり落ちたりするのでしょう?夕日はなぜ赤いのでしょう?葉はなぜ緑色なのでしょう?考えたことがありますか?現象のメカニズムを理解して、イメージできるようになれば、応用範囲が広がります。基礎知識があるだけでは展開はできません。基礎知識をベースとした柔軟な発想力が必要です。みなさんの若くて柔軟な発想力に期待しています!

関連サイト

農業機械システム工学研究室
植物工場研究センター