愛媛発世界最先端蛍光励起顕微鏡の開発とがん研究・医療応用

 block_31542_01_mバイオイメージングは、生物が生きている状態で、体内で起こっている現象を画像化する技術で、近年ライフサイエンス分野で大きな注目を集めています。中でも下村脩博士がその発見によりノーベル賞を受賞した緑色蛍光タンパク質(GFP)に代表される蛍光物質を用いた蛍光イメージングの技術革新には目を見張るものがあります。
 私たちはこの新しいテクノロジーを利用して、生きている動物の中で生じている現象を細胞・分子レベルでリアルタイムに捉え、さまざまな生命現象や病態を明らかにすることを目指しています。特に、がんについては、これまで治療が困難であったがん転移やがん幹細胞の本態を明らかにし、その治療に役立つ研究をおこなっています。

 

研究の特色

(写真1) 神経細胞のイメージング

(写真1) 神経細胞のイメージング

私たちの研究の大きな特色の一つは、生物学の技術を駆使してがんの研究をおこないながら、同時に自らがテクノロジーの開発もおこない、オンリーワンの研究を目指していることです。特にテクノロジーの質の向上には大きなこだわりを持っており、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)と文部科学省の新学術研究領域のサポートを受けながら、世界最先端顕微鏡の開発を進めています。
 すでに、生きている動物の脳深部の神経細胞のイメージングに成功し(写真1)、さらに、すばる望遠鏡などで応用されている補償光学系と新しい光学素子による新規光源を応用した革新的な2光子励起顕微鏡の開発に着手しています。

 

研究の魅力

 バイオイメージングは、比較的最近台頭してきた分野であり、新しいテクノロジーが常に生まれ続けています。また、確立された手法が少なく、自らが新しい手法やテクノロジーを作り出していかねばならず、とてもチャレンジングで困難が多い研究分野であります。そのかわり、今まで誰も見ることができなかった生命現象や病態を捉えられた時の喜びはこの上なく、とてもエキサイティングでやりがいがある研究です。

 

(写真2) 研究室のスタッフ

(写真2) 研究室のスタッフ

このような世界最先端の研究を遂行する上では、個人の力に頼るだけでなく、いろいろな分野で能力を持った研究者が終結し、強いチームワークで研究を推進する必要があります。
 我々の研究室は、医学部、薬学部、理工学部や理学部などさまざまな学部の出身で構成されており、異分野の研究者が仲良く研究をおこなっています(写真2)。

 

研究の展望

 世界最先端の2光子励起顕微鏡及び生体顕微鏡を開発し、それをがん研究に応用することで、がんの本質に迫り、さらに新たながん治療薬の開発に繋がる研究を推進します。また、開発する新しいテクノロジーは、がんのみならず、生活習慣病や脳疾患などさまざまな疾患に応用を試みています。さらに、疾患に関する研究だけでなく、脳の記憶など未だ明らかにされていないさまざまな生命現象の本態に迫る研究を目指しています。
 一方で、得られた研究成果をもとに、革新的医療機器の開発をおこないます。特にがんに関しては、新たな光内視鏡・腹腔鏡の開発を目指し、超早期がんの発見、安全な低侵襲手術、さらに難治がん治療への道筋をたてたいと思っています。

この研究を志望する方へ

 21世紀に入って、ヒトゲノム解析が終了し、ライフサイエンス分野においては新しい大発見が期待できないと思っていらっしゃる方もいるかと思いますが、生命現象や疾患においてはまだまだわからないことばかりです。バイオイメージングは、「見る」ことで、我々に新しい発見をもたらし、人類の発展に貢献します。
 これからの若い研究者は、「百聞は一見に如かず」の研究を目指し、リスクを背負ってでも、「やっぱりそうだった」ではなく、「えっ、そうだったの」という新しい結果を求める勇気ある研究者になって欲しいと願います。