愛媛県からの受託研究「リサイクル製品の販売戦略の調査研究」に取り組むゼミ活動

 block_31686_01_m私の専攻はマーケティング論です。マーケティングとは簡単にいえば、製品やサービスが売れる仕組みをつくることです。典型的には、ターゲット顧客を見出し、その顧客を満足させる製品やサービスを企画・開発し、価格をつけ、卸や小売業者などの販路を構築し、さらにテレビやネットなど各種メディアを通じて効果的に広告宣伝するといった一連の内容を含みます。
 こうしたマーケティングの考え方は、もともと製造業を中心とする大企業で発展してきましたが、現在では病院や学校などの非営利組織、さらに最近では地域の特産品や観光地における需要拡大・活性化策としても重視され、実践されるようになっています。私の研究の主要な関心は、以上のようにマーケティング論の非営利組織や地域への応用と発展にあります。
 また、学生教育面では、2010年度より愛媛県循環型社会推進課から「リサイクル製品の販売戦略の調査研究」を総合政策学科の井藤正信教授と私のゼミで共同で受託し、両ゼミに所属する3回生が取り組んでいます。今回はその取り組みについてご紹介しましょう。

研究の特色

 この研究の目的は、愛媛県が認定したリサイクル製品を取り上げてその販売戦略を提案し、それを通じて県内企業の3R活動を推進することにあります。すでに研究を完了した2010年度、当ゼミ生7人は、株式会社ダイキアクシスと太平紙器株式会社を取り上げて、各企業を訪問し製品の製造工程を見学したり、経営者に製造や販売上の課題に関するヒアリングを実施した上で、両社に対して販売戦略を提案しました。

学生による企業訪問①

学生による企業訪問①

 一つめのダイキアクシスは、環境関連を中心に多様な事業に取り組んでいる企業です。学生は同社のバイオディーゼル燃料(BDF)の販売戦略を検討しました。BDFは使用済みのてんぷら油を原料として製造されるディーゼル代替燃料で、通常の軽油と比べて硫黄酸化物や黒煙が少ない夢のある燃料ですが、製造コストや販売価格、供給体制などの課題もあり、その普及は簡単ではないようです。
 BDFは学生にとってなじみが薄く、その販売戦略を考えることは難しかったようですが、彼らは需要増加と認知度向上という2つの課題に着目し、解決方法を提示しました。 まず需要増加については、同社と関連のあるホームセンターDAIKIでの販売協力の要請や、農機や重機、JRのディーゼル機関車での利用促進、さらにBDFを使用したエコ意識を向上させるためのバスツアーの展開などです。次に認知度向上については、Twitterの利用や、ゆるキャラなどのキャラクター作りやテーマソングの作成など、若者らしいアイデアが提案されました。

学生による企業訪問②

学生による企業訪問②

 もう一つの企業は、太平紙器株式会社です。同社はその社名が示すように、紙加工品・パッケージ製品の製造を中心に発展してきましたが、近年では炭を使用した住宅関連製品や生活・美容用品、また真珠の貝殻を利用したマニキュアなど、リサイクル製品を数多く展開しています。
 学生の提案はブランド戦略とネット販売戦略です。まずブランド戦略に関しては、同社の従来ブランド「わたしの炭家(すみか)」にくわえ、フランス語で炭を意味する「CHARBON」という新しいブランド名とロゴを学生自身が考案し、製品のカテゴリーや用途に即して、これらのブランド名を効果的に使い分けるべきとの提案をおこないました。またネット販売戦略に関しては、同社でのインターネットの利用拡大を提起し、そのうえで製品のコンセプトや特徴をより分かりやすく消費者に伝えるためのホームページの改善策や、Twitterの利用による製品の広告宣伝などについての提案をおこないました。

「愛媛の3R企業展」でのアンケート調査

「愛媛の3R企業展」でのアンケート調査

 学生たちは上記以外にも、「愛媛の3R企業展」でのリサイクル製品の利用実態に関するアンケートや、「エコプロダクツ2010」の視察など多角的な調査を進め、リサイクル製品全般の販売戦略の取りまとめをおこないました。

 

 

 

研究の魅力

 今回愛媛県からの受託研究のご紹介をしましたが、それについていえば、学生にとってやはり実践的に学べるという魅力は大きいと思います。実際に企業の経営者の方にお話をうかがうことで問題を見出し、それに対する解決策を自分たち自身で考えて提案する。もちろんその過程で、研究室で学んだマーケティング論の知識も活きてくるわけです。こうした経験はなかなかできないのではないかと思います。

研究の展望

 受託研究は、2011年度も新3回生のゼミ生で継続しています。今年度は引き続き太平紙器と、新たに松浦農場(循環型農業)を取り上げて、その販売戦略を検討しています。学生の若い斬新なアイディアで、愛媛の企業に貢献できればと思っています。

この研究を志望する方へ

 マーケティングは、関心さえあれば誰でも楽しく学べると思います。身の回りの製品やサービス―自動車でも携帯でも、化粧品でも、ハンバーガーでも、今回ご紹介したようなリサイクル製品でもいいですが―それらが「なぜ売れているのか?」、「なぜ売れ続けているのか?」ということに関心があり、その理由を考えてみたいと思うなら、あなたはマーケターの資質があるといえるでしょう。身近な製品やサービスを素材に、その売れる仕組みについてみなさんと楽しく勉強できればと思います。