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2017.07.06
農産物における消費者ニーズと商品開発手法の確立
大学院農学研究科 / 准教授 山本 和博 / 専門:農業経営学

※記載内容は掲載当時のものです。

 私の所属する農業経営学研究室では、イチゴを対象に、消費者の官能調査による糖度基準に基づいた新商品を開発して、それを量販店や百貨店での販売実証試験により卸売・小売価格と販売数量を推定する体系的なマーケティング手法を開発しました。この手法で開発した生産・販売技術を県内のイチゴ生産者に移転することで、高糖度なイチゴ新商品(寒じめイチゴ)を創出し、生産者の所得向上に大きく貢献しています。なお、これらの研究の一部は前所属機関の愛媛県農林水産研究所において実施したものです。

研究の特色

 具体的な商品開発手法は次のとおりです。まず、消費者の潜在的なニーズを的確に把握するため、①女性パネラー20名による「甘い」と評価する糖度基準を解明しました。その結果、糖度(Brix)が8~9%は25.7%のパネラーが「甘い」と評価し、9~10は40.9%、10~11は60.0%、11以上は80.0%が「甘い」と評価することがわかりました。そのため、糖度11%以上のイチゴが必要であることを明らかにしました。さらに、②実際に松山市場に出荷さているイチゴの糖度分布を解明するため、出荷期間の12~5月をとおして測定した結果、松山市場管内では、糖度11%以上のイチゴは非常に少なく、全期間出荷量の10%程度しか流通していないことがわかりました。
 そのため、③糖度11%以上のイチゴを製造するための生産・流通技術を探索した結果、愛媛県農林水産研究所が開発した寒じめ栽培技術が有効であることがわかり、④その栽培法で生産した高糖度な新商品・寒じめイチゴの、量販店や百貨店での販売実証試験の結果、卸売価格1,750円/kg、小売価格480円/200g、2日間でほぼ完売することを確認しました。最終的に、これら①~④の総合的なマーケティング技術を個別の生産者やJAに移転した結果、愛媛県内において施設面積6,000㎡程度で栽培され、なかでもJAおちいまばりは、商標名「あま恋いちご」としてブランド販売し、生産者の所得向上に大きく貢献しています。

 

研究の魅力

 一般的なマーケティング研究は、消費者の潜在的なニーズを把握することに終始する研究が多くあります。しかし、本来のマーケティング研究は、把握した消費者のニーズにもとづく商品開発を行わなければ、実践には結びつきません。そのため、私たちはニーズの把握と商品開発を一体的に考える商品開発手法を開発しました。そしてこれらの技術移転により、通常のイチゴが300gパック380円程度であるのに対して、JAおちいまばりの商標名「あま恋いちご」は、現在大阪市の阪急百貨店で、200gパックが2,300円で売れるほどの人気商品になっています。このように研究が実践に結びつくことがマーケティング研究の醍醐味の一つです。

今後の展望

体系的なマーケティング技術の普及研修会の写真です

体系的なマーケティング技術の普及研修会

 これまでは、イチゴの消費者ニーズ把握とそれにもとづく商品開発を実施してきました。今後は、上記手法を適用してイチゴと同じような糖度による差別化が図られる柑橘類を対象に同様のマーケティング研究を行います。また、農産物のもつ新たな特徴である機能性や安全性などの消費者ニーズを可能な限り数値化し、それにもとづく生産・流通技術を探索しながら、穀類や野菜など多様な農産物の差別化販売を行い、農業者の所得向上につながる研究を実施する予定です。

この研究を志望する方へ

 当農業経営学研究室は、大学院博士課程やAAP留学生ほか、学部生を含めると13名が所属する大所帯です。研究内容はここで紹介した実践的マーケティング研究のほか、農業経営を合理的に行うための調査研究、農業経営者育成プログラム開発研究、環境保全型農業成立条件解明研究、農業・福祉連携研究など多様な研究を実施しています。当研究室では、生産から販売までをとおした農業経営・経済に関する実践的な研究を学ぶことができます。

研究者プロフィール