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2017.09.28
地球深部での固体の流動変形をさぐる
地球深部ダイナミクス研究センター / 准教授 西原 遊 / 専門:地球内部物質科学

※記載内容は掲載当時のものです。

高温高圧変形実験による岩石・金属の流動特性の研究

研究の概要

 私たちの研究室では、高温高圧変形実験という方法で地球深部での固体の流動特性を調べています。地球内部では深さとともに圧力が上がり、例えば深さ800kmでは約30万気圧の高圧状態にあります。また、そこでの温度は約2000℃の高温であると考えられています。地球マントルは大部分が固体岩石ですが、高い温度のため地質学的な長い時間の中では流体として振る舞っています。私たちは、実際に実験室で地球深部の極限的な高温高圧状態を再現し、そこで岩石や金属の試料を流動変形させて、その時に起こる現象を調べています。このような研究を通して、地球の歴史の過去から現在にかけて内部で起こってきた現象を解明しようとしています。

研究の特色

 地球内部のマントルでは地質学的な長い時間をかけて物質が対流しています(図1)。このマントル対流により、地球は数十億年の時間をかけて徐々に冷えていきます。また、マントル対流の存在によって、地表と地球深部の間で物質のやり取りが起こってきたと考えられています。こういったことから、マントル対流は地球の歴史の鍵を握る重要な現象の一つです。一方、核の内側半分にあたる固体金属の内核には、地震波速度異方性といって、地震波の伝わる速度が南北方向と赤道方向で大きく異なる不思議な特徴を持っていることが明らかになっています。この地震波速度異方性が生じている原因の一つの可能性として、内核での固体金属の流動変形が挙げられています。このような地球内部での固体の流動変形を正確に理解するために、私たちは高温高圧変形実験を行っています。

図1:地球内部のマントル対流と岩石の流動変形

 実験には、通常の高圧実験装置に変形機構を追加した特殊な装置を使います(図2)。通常の高圧実験では試料を中心に収めた圧力媒体を複数のアンビルと呼ばれる高硬度材料でできた圧力台を使って圧縮することで高い圧力を発生させます。この仕組みにより高圧を発生させたうえで、高圧変形実験ではさらに向かい合った一対のアンビルを独立して動かすことで、高圧力を保ったまま試料を変形させます。また、圧力媒体の内部に発熱体を組み込んでおくことで(図3)、地球深部のような高温高圧力下での実験が可能になります。

図2:愛媛大学に設置されているD-DIA型高圧変形実験装置、MADONNA

図3:高温高圧変形実験用のセル構成。1辺4mmのセラミックス製立方体圧力媒体の内部に試料や発熱体を組み込んで実験に用いる。試料は硬いAl2O3にピストンに挟まれているため、圧力を加えた後に圧力媒体全体を上下に圧縮することにより、試料は斜め45°方向に単純剪断変形する。

 このような実験によって、私たちは最近地球深部での岩石や金属の流動変形によって生じる結晶選択配向という現象を調べています。結晶選択配向とは粒子が特定の方向にそろった状態になることです(図4)。現在、これを手掛かりに地球のマントル深部や内核での物質流動の方向を明らかにしつつあるところです。

図4:結晶選択配向が発達した六方最密構造の鉄の極点図。高温高圧での単純剪断変形により強い結晶選択配向が生じている。各結晶軸が集中している方位を暖色で表している。

 

研究の魅力

 実験室で自分の手で地球内部を再現してしまうことが魅力だと思っています。小さな試料から、大きな地球がわかるというのが面白いではないですか。

今後の展望

 地球の深部ほどわからないことが多いので、研究すべき問題が多く残されています。しかしいっぽうで、そこでの温度圧力はより高いので実験は困難です。より高い圧力での実験を行おうとすると、より狭い範囲に力を集中させる必要があります。このことは、高圧での実験ほど実験に使う試料や圧力媒体がより小さく、より精密に実験を行わなければならないことを意味します。ある種の職人芸的な技が必要な世界ですが、これを駆使した技術開発をすすめ、これまでほとんどわかっていないより地球の深いところでの物質流動を明らかにしていきたいと考えています。

この研究を志望する方へのメッセージ

 実験に使う部品は再使用できないものが多く、実験ごとに部品作りが必要です。部品作りの得意な人は研究を進めるうえで有利です。なので、プラモデル作りや手作り工作が好きな人は、高温高圧(変形)実験に向いていると思います。手先の器用な人は、それを武器に世界中で誰もできなかった実験を成功させ、インパクトのある研究成果が得られるかもしれません。

研究者プロフィール