日本の労働市場の現状と課題-働き方改革をはじめとした政府の政策への提言-
※掲載内容は執筆当時のものです。
研究の概要
私は、財政学を専攻しており、授業においては、社会保障制度や日本の財政について解説をしています。一方で、雇用保険制度など労働に関する問題にも取り組んでおり、現在は、財政学とともに、社会政策や労働経済に関する研究を進めています。
具体的には、働き方改革関連法が目指す、非正規雇用と正規雇用の待遇の公平化や、労働者のメンタルヘルスの改善、ワーク・ライフ・バランス推進に対する政策的意義について検証しています。特に、労働者のメンタルヘルスや幸福度がどのような要因によって決まるかを検証し、労働者を取り巻く職場環境などの諸要因がどのような影響を与えているか実証分析を進めています。固定効果モデルなどの様々なモデルを使用したパネルデータによる解析を行っており、政策的インプリケーションを理論的に説明している点において、独創的なものであると言えます。
また、これらの問題は、社会政策や労働経済のみならず、財政学においても関係の深い研究テーマであり、新たな研究分野の開拓となります。
研究の特色
メンタルヘルスや幸福度に関しては、パネルデータによる分析の必要性が多くの研究で指摘されています。例えば、地位や環境の変化が起こると、もともと変化に敏感な人、ストレスに弱い人、うまく適応できない人が心理的な問題を抱えるようになります。心理状態が地位を決定するのか、環境が心理状態に影響を与えるのかを確認するためには、パネルデータを使用することが必須条件となります。実証分析においては、クロスセクションデータによる分析にとどまらず、パネルデータを用いた研究を行っており、雇用形態の格差や、ワーク・ライフ・バランスなどの諸要因を考慮しています。
研究の魅力
1990年代から、パートやアルバイト以外の非正規雇用の増加が目立ち、労働者派遣法の改正に伴い、派遣業種の拡大と雇用の不安定さが問題となってきました。さらに、正規雇用との教育訓練の機会や賃金などの待遇面で格差が生じ、「二重労働市場」の問題が指摘されるようになりました。
非正規雇用をめぐる研究の中で着目されてきた問題が、非正規雇用のメンタルヘルスや幸福度の問題です。本研究の魅力は、これらの問題について、パネルデータによる解析を行い、政府の労働政策の有効性を検証している点にあります。
今後の展望
私の研究成果について、日本経済政策学会『経済政策ジャーナル』、日本社会関係学会『社会関係研究』、日本公共政策学会『公共政策研究』といった学会誌に多数の論文を掲載してきました。今後も、様々なジャーナルに論文を投稿する予定ですが、多くの論文が、一定期間の後、オンラインでアクセスできるため、社会に成果が還元できると考えられます。また、私の著書においては、財政学と社会政策を中心に経済理論を解説しており、前述の研究についても紹介しています。
さらに、一般社団法人愛媛県労働者福祉協議会で政策検討委員を務めており、年2回の『愛媛県勤労者定期観測調査』において、質問項目の再検討を行ったり、愛媛県の企業の賃金や労働時間、経営状況、仕事の満足度等の調査項目を設けるなどの取組を行っています。また、西予市の行財政改革有識者会議委員も務めた経験をもち、財政再建のみならず、労働改革についても知見を有しています。今後は、聞き取り調査やアンケート調査、公的機関へのヒアリングも実施し、研究を進めていく予定です。



