実践的な学びを通して英語使用者としての意識変容を促す英語教育プログラムの企画・開発

英語を学校で学ぶ単なる「教科」の一つと思っていませんか?
確かに、教科ではあるのですが、そもそも、英語は、世界中のたくさんの人が使う「言語(ことば)」です。もしかしたら、習い始めの頃は、「世界中の人たちとコミュニケーションができるようになりたい」という気持ちで、「ワクワク」しながら学んでいたかもしれませんが、高校入試や大学受験など、「試験」があるために、その気持ちが変わってしまったかもしれません。英語の試験問題に、正しく答えられるように教科書や参考書にある文法問題・演習をたくさんこなしていると、英語の「使うことができる」という言葉としての側面、すなわち基本的な役割を忘れてしまいがちです。確かに、テストで良い点を取ることも大切なのですが、それは「英語」という言語のほんの一面にすぎません。そこで私は、英語の「コミュニケーションの手段としての役割」にもっと目を向けてもらうためには、どのような教育方法を開発したらよいかということを考えて研究・開発を進めています。

研究の概要

私の専門は、英語教育です。その言葉の通り、「英語を教えること」なのですが、その仕事は、大きく3つにわけることができます。一つ目は、文字通り、英語を児童・生徒・学生に教えるという教育実践です。二つ目は、その実践を評価することで、課題や問題点を見出し、どのように改善すべきか研究することです。そして三つ目は、そうした研究結果や成果に基づいて、どのように英語を教えると、もっと効果的になるのか、アップデートした、あるいは新しい教育方法を企画・開発することです。これら3つは、互いに結びつきあっています。教育実践で得られた知見を吟味するための評価研究を行い、そこで得られた成果がまた次の新しい教育実践に生かされ、そのプロセスが継続的するということになります。

研究の特色

短期的には、一回一回の授業で学生から得られたフィードバックをもとに、次の授業では、〇〇を取り入れてみようとか、長期的には、学期・年度単位での英語教育プログラムを企画して、△△というスキルを学生に身につけてもらおうなど、考えたことを比較的に早く、具体的に実践に移す・生かすことができるという特徴があります。新型コロナウイルス感染症感染拡大のために、実施できない時期もありましたが、近年では、教室を飛び出して、地元松山を英語で観光案内しようというプロジェクト型の英語教育プログラムを企画・開発しました。実はこの企画の発案は、「もっと英語を使う環境があればよいのになぁ」というある学生さんからのコメントがきっかけでした。英語教育では、様々な教授法が提案されているのですが、その中の一つにこのプロジェクト型というものがあります。教科書で英語を学ぶという受動的な方法ではなく、何らかのプロジェクト(ここでは、英語で観光案内をすること)を通して、英語を使いながら学ぶという能動的で、発信型の英語学習を促すものです。幸運なことに、松山とその周辺には、観光の名所がたくさんあり、外国からの旅行者もたくさん来られています。こうした観光客の皆さんに、英語で観光ガイドができるような授業があれば、先ほどの学生さんのように英語を使いたいというニーズに応えることができるのです。

研究の魅力

私が企画・開発した授業を受講して、「英語学習がもっと好きになりました」とか、「英語を話すことに自信を持つことができました」といった声を聞くことができた時に、とてもうれしくなります。英語で自分が何をすることができるのか、そうしたことを体感できるようになれば、楽しさを感じながら長く英語を学んでいけるようになるのではないかと思って研究・開発に励んでいます。

今後の展望

コロナが始まった令和2年度から、小学校での英語教育が正式に開始されました。英語初習者という言葉を使いますが、義務教育にあっては、「慣れ親しみ型」という教育スタイルが一般的です。中学生も後半になりますと、高校生のように「積み上げ型」の教育スタイルで、英語についての知識、すなわち、語彙力と文法操作力を身につけていきます。しかしながら、大半の方々は、よほど仕事で英語を使うことがない限り、この積み上げ型の英語学習者として、ずるずると、積み上げたものが少し崩れては、また積み上げ、という繰り返しを行っているのではないでしょうか。一生、学習者として終わってしまうのはもったいない気がします。課題となるのは、この次のステージである英語使用者として、自分自身の中で意識改革をする必要があるということです。英語学習者としてのステージが完結することはありませんので、高校卒業、ないしは大学1年生を終了した時点で、意識改革が必要なのだと思います。英語を使ってよいのです。ちゃんとできるようになるまで「使わないし、使っちゃいけない」というような規範意識が邪魔をしてしまうのか、なかなか、本学の学生も、英語使用者であるという意識を持つことができないでいます。そうするとやはり教育機関として必要なことは、実践的な学びを通して英語使用者としての意識変容を促す英語教育プログラムの企画・開発が必要となるのです。そして、そのプログラムは、慣れ親しみ型から積み上げ型と学んできた教育ステージの最終段階である、「プロジェクト型」へと結びついてくるのです。

この研究を志望する方へのメッセージ

コロナ禍を経たことで、オンラインで海外とつながって、コミュニケーションをとることができる環境が格段に整いました。世界は皆さんが使っているスマホやパソコンとつながっています。もはや英語を使うことができる環境は、みなさんの手の中にあります。このような英語学習環境の新たなステージにおいて、ことばの学習としてどのような教授法を企画・開発できるのか、一緒に考えてみませんか?