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重要なお知らせ

未来の愛大生へ

2021.12.21
大学は可能世界の宝庫

中島 敏幸 教授

●大学院理工学研究科(理学系)
●生態進化学・理論生物学

 私が愛媛大学の理学部に赴任して二十数年になります。私の研究は微生物が作る生態系をフラスコの中に再現して、そこで起こる進化を追跡することです。進化なので直ぐには結果は出ませんが、愛大理学部の自由な雰囲気の中で気長に続けてきました。

 人生は「選択」の連続といいます。ただ、何かを選ぶことは難しいですね。なぜなら、裏から見ると「その他を選ばないこと」だからです。人生は捨てることの連続という見方もできます。あのときもし別の大学に進んでいたら、別の研究分野に進んでいたら、今どうなっていたのかな、と考えることがたまにあります。

 理学部の近くに俳人の種田山頭火が終の棲家とした一草庵があります。山頭火が好きな私は、赴任してまもなく早速散歩がてら行ってみました。入り口から入ると「生涯の裏へお廻りください」というような案内板がありました。「うっ、さすが山頭火、いきなり禅問答か?今まで捨ててきた選択の裏の世界へ廻ってみよということか」と考え込んでしまいました。しかし、近づいてよく見ると「生垣の裏へお廻りください」とあった。私の早とちりでした。しかし、この誤読が気に入って、後日、砥部焼の茶碗の絵付けに書いてしまいました。

 私の経験では、選ばなかったことは永久に捨てることでもありません。世の中の道は意外と網目状になっていて、以前捨てた選択肢に通じるパスもあるものです。友達や教員との偶然の出会いもあるでしょう。たぶん障壁は心のなかにあるのです。皆さんは多くの選択肢とともに様々な可能世界への入口に立っています。好きなことを探ってください。愛媛大学は、学生の主体性や選択の柔軟性を備えています。

              まっすぐな道でさみしい。

山頭火の一句です。愛媛大学の曲がりくねったところを楽しんでください。

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