理学部生物学コースの生態学研究室の畑啓生准教授らが取り組んでいる、生物の種間関係を紐解き、松山の絶滅危惧種の保全に向けた研究がFreshwater Biology誌に掲載され、ウェブ上でEarly Viewの形で令和2年10月15日(木)に公開されました。それに伴い、生態学研究室で取り組む研究が、令和2年12月7日(月)の朝日新聞で紹介されました。また、産経新聞、京都新聞等でも紹介されました。
朝日新聞掲載記事(デジタル版)「すべての生物は結ばれている 愛媛大『種間関係』研究」(12月7日) ※予告なく変更・削除されることがありますのでご了承ください。
生態学研究室は、松山平野の小河川でこの30年間に激減したマツカサガイとイシガイ(両種とも愛媛県では特定希少野生動植物種に指定)、準絶滅危惧に指定されているヤリタナゴ(愛媛県では絶滅危惧IA類かつ特定希少野生動植物種に指定)と国内外来種であるアブラボテを調査しました。調査の結果、残された数少ない貝をタナゴ類が過剰に産卵床として利用し、それにより希少在来種のヤリタナゴと、国内外来種アブラボテとの交雑が促進されていることが明らかになりました。(写真参照)
研究の概要と意義
松山平野では、ヤリタナゴが、マツカサガイとイシガイを産卵床として生息しています。これらの種は1000万年という途方もない時間を掛けて地域に適応してきました。しかし現在、マツカサガイとイシガイ、ヤリタナゴの減少と、ヤリタナゴと国内外来種アブラボテとの交雑が進行しており、私たちの生きている間にも姿を消してしまう恐れがあります。日本列島が形成される前からヒトより早くこの地で暮らし、それぞれの地域に適応を遂げてきたヤリタナゴが、イシガイ類とともに生きていける豊かな水辺を、私たちは次の世代へと引継いでいかなければなりません。
この研究は、松山平野の小河川に残された最後のヤリタナゴとマツカサガイの生息地に保全区を策定する必要があることを示します。保全区では、ヤリタナゴを守るために、国外外来種でヤリタナゴと交雑するアブラボテを侵入させないこと、またヤリタナゴ集団について遺伝子マーカーを用いたモニタリングを実施してアブラボテからの遺伝子浸透の程度を把握することが必要です。また、マツカサガイは、その幼生がヨシノボリ類に寄生し、稚貝は砂底でのみ生育するという生態的特性をもっています。マツカサガイを守るため、海から遡上してくるヨシノボリが多く生息し、清浄な砂底の底質を持ち、貝の捕食者である外来種のコイが侵入できない場所を作り、管理することが必要です。
さらなる活動に、地元住民と行政と協働して取り組めるように、力を合わせて努めてまいります。
<理学部>