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大学院理工学研究科の石川史太郎准教授らが半導体ナノワイヤに関する研究成果をNano Letters誌に発表しました

 大学院理工学研究科電気電子工学コースの石川史太郎准教授、赤松良彦さん(大学院生)、下村哲教授らの研究グループは、半導体材料GaAs/GaAsBiヘテロ構造ナノワイヤの合成に成功し、同材料で発生するナノスケールの構造変形やそれに伴う特徴的な発光の性質について明らかにしました。
 半導体ナノワイヤは、数100nm以下の直径を有するナノスケールの針状結晶であり、細線型トランジスタやレーザー、センサといった既存の枠組みを超える新構造・機能デバイス基礎構成材料として期待され、特に、2000年以降活発に研究・応用が試みられています。一方、化合物半導体GaAsは、従来、高速トランジスタや光通信用高性能半導体レーザー、その光検出などに用いられる高機能材料ですが、近年同半導体にBi(元素:ビスマス)を導入した混合結晶GaAsBiとすることで、特に通信帯域の発光効率や温度安定性が劇的に向上することが予測され、その高品質結晶作製やレーザー応用が試みられています。
 石川准教授らの研究グループは、分子線エピタキシーという手法を用い、原子層ごとに結晶が出来上がっていくGaAsナノワイヤの結晶成長中にBi導入を試みました。その結果、GaAsBiナノワイヤの結晶合成に成功するとともに、同結晶の構造・光学的特徴を明らかにしました。出来上がったGaAsBiナノワイヤは、一般的なGaAsと異なり、表面がナノスケールで大きく波打ったような乱れが観測されました。これは結晶の歪によるものと考えられ、同現象をさらに正確に制御することで、量子力学的効果などにより微細な構造物性が得られる展望を示しました。また、同材料の発光は、Biの導入でより通信帯域に近い赤外波長へシフトすることを示しました。さらに、発光は上述の結晶の乱れを強く反映したもので、一つ一つの発光部位は空間的にごく小さな数nm以下に制限されているものの、それがワイヤ全体、特に根元から中心までに多く散りばめられた状態にあることが分かりました。
 今回の研究成果により、既存の光通信レーザーの大きな特性向上や、さらには新しい概念の通信素子が実現されていくことなどが期待されます。
<研究は、物質・材料研究機構、JEOL、ドイツ・ポールドルーデ研究所との共同研究で行われました。本研究の一部は、石川准教授が本年度愛媛大学外国派遣研究員制度により同ドイツ研究所で行った研究成果です。>

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合成したGaAs/GaAsBiヘテロ構造ナノワイヤとその元素および発光分布

 この研究成果は、2015年10月26日付のNano Letters誌電子版で公開されています。
Fumitaro Ishikawa, Yoshihiko Akamatsu, Kentaro Watanabe, Fumihiko Uesugi, Shunsuke Asahina, Uwe Jahn, and Satoshi Shimomura, Metamorphic GaAs/GaAsBi Heterostructured Nanowires, Nano Letters, doi: 10.1021/acs.nanolett.5b02316.

参考ホームページNano Letters