お知らせ

平成17年年頭にあたっての学長挨拶

 平成17年1月4日(火)、事務局会議室において、小松学長が年頭にあたって挨拶を行いました。

 各部局長及び事務系幹部職員ら約60人を前に小松学長は、「昨年は法人化の形を作りあげた年。今年は、大学として相応しい中身作りをより深く考えていかなければいけない年。いろいろと厳しい状況の中、全職員が一丸となりこれからの難題課題に向かって力を合わせていきたい。」と、力強く年頭の挨拶を行いました。

年頭所感−「学生中心の大学」へ−

平成17年1月5日 愛媛大学長 小 松 正 幸

新年おめでとうございます。昨年にも増して多難な、そして、厳しい試練が待ちうける年が明けました。

 ■昨年を振り返って

 昨年は、法人化初年度の年であったため、その枠組み作りを行い、教育研究については従来から進めてきた大学改革を着実に遂行することを優先してきました。その結果、教育、研究、社会貢献という大学の基本的使命に沿った種々の施策や事業を遂行することができたと思います。
 なかでも教育・学生支援機構と学生支援センターの設置、スーパーサイエンス特別コースの募集開始、社会連携推進のための地域創成研究センターの創設、社会連携推進機構、知的財産本部の設置、サテライトオフィス東京の開設などをあげることができます。
 とりわけ、学生支援センターの設置は、愛媛大学が目指す「学生中心の大学」の要となる組織と位置付け、学生支援センターにアドミッション・オフィス、学生生活支援オフィス、学生相談オフィスを配置しました。今後、大学の中で重きをなす組織になってくると思います。また、学生の自主的活動「『お接待』の心に学ぶキャンパス・ボランテイア」が平成16年度教育GPに採択されたことは喜ばしい出来事でした。
 さらに、全学の卒業生、在学生、退職教職員、現職教職員が加入する愛媛大学校友会の結成が実現したことは、画期的なことでした。

 ■着実に自主的・自律的改革を

 さて、今年は国立大学を取り巻く環境が私たちに大変厳しい将来を予測させる状況にあり、今後のあるべき姿、辿るべき方向などをじっくり考え、相当の決意を固める時期であると思います。今後、益々競争的環境が助長されるなかで、国立大学の差別化・選別が一層進行し、地方大学や小規模大学の瓦解が始まるのか、それとも着実な自主的・自律的改革を行うことにより大学の個性化が確立し、地域に貢献し、世界に発信する重要な大学になっていくのか、私たちはその瀬戸際にあります。
 国立大学の法人化は「官から民へ」「中央から地方へ」という政治・行政システムの大きな転換期の一環として捉える必要があります。地方自治体の三位一体の改革も本来の方向は正当であり「中央から地方へ」の流れは不変であるように、国立大学も設置形態を国から各大学法人に移すという本来の意図は正当であり、必然的方向でもあります。国立大学法人は自らの意思と責任を有し、すべての法的関係において権利義務の主体たり得る能力が与えられているものです。この能力を十分使えるかどうかは私たちの主体的・自律的力量にかかっています。
 従来、国立大学は文部科学省が設置し管理の責任を負う、従って経営責任は国にあり、大学には教育研究の責任主体として教授会と評議会、その責任者として学長が存在していました。法人化は分離していた教学と経営を一体化することを意図し、それゆえ教学はもとより経営の責任も大学自身が負うこと、場合によっては統合や廃止の責任を負うことを含意しているのです。国は財政難を理由に国立大学法人への運営費交付金を削減し、附属病院の増収を義務づけ、授業料を値上げし学生負担を増やすなど、大学が困難に陥るのを加速するよう仕向けているようにさえ思われるのです。このような状況にあって、いま私たちに必要なことは何かを考えた時、大きく分けて3つあると言えるでしょう。

 ■実質的に教学と経営を統一

 第一に、実質的に教学と経営を統一し大学の強固な自主性・自律性の確立を図ることであります。教学部門と管理部門が互いの立場を理解しなければ、大学は自主的・自律的改革など到底できるものではないと思います。
 教学と経営の統一は、大学を大学本来の使命に基づいて運営することを意味します。大学は本来学生が存在し、教える教員がいて、教育研究を行うことによって成り立っている組織です。管理運営や経営はその使命を遂行するための下支えの役割を果たしていると言えます。管理経営があって教育研究があるのではないのです。「学生中心の大学」の意味するところはそこにあります。これを実質化するには、管理運営システムの全体的な見直しと新たな位置づけを目論む必要があると考えます。

 ■高等教育の重要性

 第二は教育研究費、いわゆる校費の配分問題です。16年度は従来の方式を踏襲した結果、配分額は従来に比較して小額の減で済みました。しかし、17年度から運営費交付金は毎年ほぼ1億円づつ減額され、附属病院は毎年2億円強の増収が必要です。第一期が終了するまでに5億円強の運営費交付金が減ぜられれば、校費全体の約40%の減、つまり2学部分の校費がなくなることになります。このような状態の中では従来通りの均等配分は全体として力を弱めるだけではないかと危惧されます。最低限教育費は保証されなければなりませんが、研究費は外部資金を獲得するか大学独自の基金を確保することによってしか保証されないと考えられます。そうでなければ人件費を削減する以外に方法はありません。
 このように、これからの地方大学は国立のみならず公私ともに財政的に極めて厳しい状態になることが予想されますが、高等教育は国や州などによる公的な支援によって成り立つものであることは先進諸国の常識であり、我が国のように高等教育機関で学ぶもの自身がその経費の大半を負担するような国は先進諸国には例がないのです。大学はこれからの知識社会を支える高度の能力を備えた人材を養成する重要な教育機関であり、高等教育は50年、100年の大計をもって取り組むべき世代を超えた施策でなければならないと思います。これから本格的に高等教育の重要性を論じ、社会に訴えて理解を求めてゆく努力をしなければならないと思います。そのためには、大学が社会に認められるような立派な教育、研究を進めなければならないでしょう。

 ■大学評価

 第三に重視しなければならないことは大学評価です。愛媛大学では、昨年から教員の個人評価を試行し、教育研究データベースも作成する準備ができております。また、学生の授業評価に加え、入学時、卒業時のアンケート調査も大変重要であることがわかりました。このような大学独自の自己点検評価に加え、中期目標・中期計画に基づく年度計画の実績評価、認証評価機関による大学認証評価、さらには第一期中期目標・中期計画の評価を視野に入れ、必要な準備を整える必要があります。無論、評価のために評価があるのではなく、大学を良くするためにそれがあるのであり、一人一人の日常のレベルアップの努力が評価を通して報われるべきものであると考えます。

 ■これからも教職員の力を

 最後になりましたが、教職員の皆さんの努力によってこれまで難しい問題、大きな課題を乗り越えてきたことに敬意を表し、今年もまた一丸となって難題・課題に向かって力を合わせて邁進することを訴えるものです。