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重要なお知らせ

お知らせ

平成16年度愛媛大学卒業式並びに修了式、大学院学位記授与式を挙行

 平成17年3月24日(木)午前10時から、愛媛県県民文化会館メインホールにおいて、平成16年度愛媛大学卒業式並びに修了式が挙行され、1752名に学位記または修了証書が授与されました。
 また、午前11時から、同サブホールにおいて、大学院学位記授与式が挙行され、429名に学位記が授与されました。

 式終了後は、サークルごとに分かれて、先輩を胴上げしたり、花束を贈ったりしてそれぞれ祝福の輪が広がっていました。

平成16年度愛媛大学卒業式及び修了式式辞 

平成17年3月24日  愛媛大学長 小 松 正 幸

 本日ここに平成16年度卒業式並びに修了式を挙行するにあたり、学位記を授与された1、738名の卒業生の皆さん、修了証書を授与された14名の修了生の皆さんに、心から祝福を申し上げます。
 また、本式典にご出席をいただきましたご父兄、ご関係の皆様に対して、心からお祝い申し上げますとともに、日ごろからの本学へのご支援とご援助に対しまして深甚なる謝意を表するものであります。

 本日のこの晴れの式典には先ほどご紹介させていただきましたように、多数のご来賓の臨席を賜りました。お忙しいなか、ご臨席を賜りました皆様に厚くお礼を申し上げます。

 さて、厳しかった冬も終わり、このところ当地もようやく春めいてまいりました。柔らかな空気がこの式典会場を暖かく包み込んでくれているように思われ、大学人としての喜びもまたひとしおであります。卒業・修了される皆さんがこの4年間あるいは6年間、さまざまな困難や試練を乗り越えて、今日のこの日を迎えるに至った努力に対し、心から敬意を表し、その努力を称えるものであります。ここまでに至った過程には、苦楽をともにした友人、先輩や後輩、指導教員や職員の暖かい支えがあったことを忘れてはなりません。大学で自らが得た知識や技能のみならず、このような人間関係や人々との交流の経験は、皆さんのこれからの人生の糧となるものであります。

 さて、皆さんの多くは卒業後、社会に巣立って行く訳ですが、いま、我が国は、社会的にも、経済的にも、これまで経験したことがなかったような困難な状況におかれております。これを予想外の大きな混乱と感じている方々も多いのではないでしょうか。しかし、私たちは日々起こっている事象を表面的にだけ捉えて一喜一憂するのでなく、個々の現象の本質を知的に把握し、今という時代がどういう大きな変化の過程にあるのか、歴史的にしっかりと理解する視点が必要でありましょう。

 現代は世界にとっても、また、わが国にとっても、50年とか100年に一度の経済産業構造の歴史的な転換期であるといわれており、それに伴って社会システムが変わらなければならない状況の中にあります。

 20世紀末、わが国は優れた技術力と労働力をもって「ものづくり」において世界を制し、乏しい材料資源やエネルギー資源というハンディを克服するとともに、世界のモデルとまでいわれた人づくりと産業社会システムからなる「経済大国」を築きあげました。

 しかしどうでしょう、この黄金期は20年と続きませんでした。この教訓には重いものがあります。技術革新もいずれは頭打ちになるものであり、技術そのものはすぐに普遍化し、たちまちのうちに世界中に広まってしまい、いまや、わが国の多くの「ものづくり産業」は競争力を失い、国内企業は国外、主として中国やアジア各地に流出し、極端な首都圏への一極集中の果てに地方都市は空洞化現象を引き起こすことになりました。さらに、安価で質の良いものを大量に生産することを追求した結果、確かに暮らしは、一見、楽になり、豊かにはなりましたが、他方では大量消費・大量廃棄という負のサイクルをもたらし、地球環境の著しい劣化を招いてしまいました。

 このような状況の中で、これまでのわが国の科学技術政策や産業システム・社会システムにも反省がなされ、「環境に配慮した持続可能な発展」と「科学技術創造立国」を21世紀の最大の課題とすることが、強く要請されることになったわけであります。いま、産業界は新しい独創的技術、そしてそれを軸に新しい産業を起こすこと、すなわち、ベンチャー的な起業を切望しております。このような産業構造の転換期には、既存の大企業やシステムに安住することを追い求めるだけでなく、自分の能力を発揮する場を自らが作り出すような気概に満ちた挑戦を是非皆さんにしていただきたい。若い人にとってはこういう時代は飛躍のチャンスでもあります。その気になれば、自分が本当に自分らしく生きる途を見つけることができる時代です。

 人はいつでも目標をもって生きることが必要だと思います。それは個人的な範囲のことから、社会やもっと広く人類共通の課題に至るまで、いろいろな段階の目標があります。目標が高ければ高いほど、その範囲が広ければ広いほど、その人の志の高さ、人間の大きさが感じられるものです。高い志は、低い満足度に甘んじる自分を励まし、自分自身をして年齢を問わず成長し続けずにはおかない存在にまで鍛え上げます。そして、志の高さを決めるのは、その人の教養の深さであります。

 これからは、皆さん自分自身が目標をたて、その目標に向かってじっくり力をつけ、自分の可能性に挑戦する人生をつくりあげる時代です。そのために人生常に学ぶことを継続し、教養を高め知識を深めるという努力を継続することが必要です。何かを獲得し、そして、己を知るためには我慢も必要です。「石の上にも三年」ということわざがあります。「気に入らないから、自分にあっていないから」という理由だけで、与えられた場をすぐに放棄したり、仕事を辞めてしまえば、いつまでたっても大切な何かを得ることはできません。我慢をして努力をしたその先に、もう駄目だとあきらめずに努力を持続したその先にこそ、自分自身では予想もつかなかったような愉快な人生の成果が待ち受けているのではないでしょうか。

 昨年、2004年は大変な自然災害に見舞われた年でありました。思えば皆さんが入学した年の春には芸予地震があり、松山はじめ愛媛県一円には大きな被害がありました。愛媛大学も相当のダメージを受けました。また、昨年の台風による豪雨災害は、本県ではこれまで比較的台風被害の少なかった東予地域が大きな被害を受けたことは、よくご存知でしょう。新潟中越地震、年末のスマトラ沖地震とそれに伴う甚大な津波被害は、私たちに大きな衝撃を与え、いまだに生々しい記憶として残っております。さらに、つい先日、思わぬところに福岡西方沖地震が発生しました。

 昨年はたまたま台風の当たり年であったのか、それとも地球のグローバルな温暖化による異常気象のあらわれなのか、まだ即断はできないかもしれませんが、日本だけでなく、中米ではかってない規模のハリケーンに度々襲われていることや、様々な異常気象現象が世界的規模で起こっていることは周知のことであります。例年にない強大な台風やハリケーンが発生した直接の原因は、赤道付近の海水面温度が異常に高いことによると、指摘されています。

 長期的な眼でみると、大陸氷河が年々後退していること、海水面が少しずつ上昇していること、極地域の氷塊が減少しつづけているなど、地球温暖化を裏付ける証拠が数多く挙げられています。温暖化に伴う異常気象が今後も続けば、100年、200年に一度の豪雨が、20年、30年に一度という頻度で起こることが予想されます。そうなれば山地の崩壊が進行するだけでなく、生産や居住の場である平地までもが洪水と土砂によって埋没しかねない状況となります。

 このような災害をいかに軽減し、平穏な市民生活をいかにして守るか、これが私たちに課せられた大きな課題のひとつであります。同時に、地球温暖化の原因と見なされる炭酸ガスの削減、省エネルギー化や森林資源の保全など、抜本的な解決を展望した人類的な課題に真剣に取り組まなければ、私たちの存在自体が危険にさらされることになりかねません。

 これから国の内外で活躍する皆さんにとって、災害から身を守ることは他人事ではなく、皆さん自身の現実の問題として心に留めておいていただきたいと思います。2004年の災害の教訓は、第一に、地球上どこでも自然災害は起こりうるものであり、そのための知識をしっかり持つこと、第二に、災害が起こったときには自助、共助の原則を忘れないこと、すなわち、まず自分で自分を守り、同時に、互いに助け合うことであります。私の専門に引きつけて、地球環境と皆さんの生き方について述べてきました。この他にも多様な分野で、多くの克服すべき諸問題を私たちは抱えているわけであります。大事なことは、皆さんの学びと研究の中で鍛えてきた知の力は、ご自身の宝であると共に、人類共有の財産として活かして行かなければならないということなのです。

 いろいろな問題を巻き込みながら、世界はまさしく渦巻き、動いております。そこにはまた山積する難問と共に、そうであればあるだけ、新しい無限の可能性が含まれているわけであります。皆さんが愛媛大学で培った普遍的な知の力をいかんなく発揮され、未来の可能性に果敢に挑戦し、活躍されますことを心から願いましてはなむけの言葉と致します。