平成19年5月18日(金)、14時から大学本部で、学長定例記者懇談会を実施しました。
今回学長から発表した内容は、以下のとおりです。
1)海外旅行感染症外来の開設について
医学部附属病院に海外旅行感染症外来を開設。その目的や診療内容について説明しました。
2)南予水産研究センターの設置について
水産養殖の中心「愛南町」に南予水産研究センターを平成20年4月に開設予定。その経緯や目的、体制などについて説明しました。
3)研究コーディネーターの設置について
研究コーディネーターの設置目的や役割、業務内容について説明しました。
4)平成19年4月からの役員及び経営協議会委員について
平成19年4月1日からの役員及び経営協議会委員の体制について説明しました。
5)国際交流センター第2回フォーラムについて
第2回フォーラム「国際連携における愛媛大学の挑戦」の開催日時や内容について説明しました。
6)留学生受入マニュアルキットの作製について
留学生受入マニュアルキット作製の経緯や内容について説明しました。
7)平成19年度愛媛大学の重点課題について
平成19年度の愛媛大学の重点項目、課題などについて説明しました。
広報室
平成19年度の愛媛大学重点課題
はじめに
平成18年度は中期目標・中期計画に沿った年度計画を推進するとともに、これまで本学が行ってきた種々の施策を実効あるものにし、更に、愛媛大学の理念と目標の実現を目指し、以下に示す長期的課題を掲げ、その具体化に取り組んできた。
第一 「学生中心の大学」づくりに向けて、教育内容の不断の改革を行うとともに、学生の学習と生活支援を充実させる
第二 世界レベルの研究をより一層活発に展開するとともに、質の高い多様な研究推進のための環境を整備する
第三 地域連携ネットワークを拡大し、地域の活性化、地域の発展に貢献する人材の育成と学術研究を推進する
第四 先進諸国の研究拠点と連携するとともに、とりわけ援助の手を求めている東南・南アジアを中心とする開発途上国への教育研究を通した支援を進める
第五 自律的運営体制を確立し、人事マネジメントの充実と財政基盤の強化を目指す
平成19年度においても引き続きこれら5項目の事項を主要な課題として掲げて、その実現に向けて取り組むとともに、第一期中期目標終了時の暫定評価(平成20年)に向けて中期計画を達成するための取り組みを強める。
I 教育改革と学生支援
1.入試方法に関する平成18年度の取り組み
大学全入時代に直面し、愛媛大学は高いモチベーションと質を備えた学生を確保するための手だてが必要である。平成18年度には入学者選抜方法の改革に関する専門委員会を設置し、入り口部分の改革、募集戦略の改革の取り組みを開始した。
主要な検討項目と方向は、
1) 平成19年度入試からAO入試導入(法文学部総合政策学科、教育学部芸術文化課程)
2) 附属学校園の大学附属化
附属学校園の改革に関する検討委員会において、大学附属化を検討中
3) 法文学部総合政策学科改組 地域(リージョナル・スタディ)コースの設置
4) 農学部と県内農業関係高等学校との高大連携教育推進
平成20年4月「農山漁村地域マネジメント特別コース(入学定員10名)」設置予定 (平成18年6月6日県内農水産系高校14校と「高大連携教育に関する覚書」を締結)
2.入試方法に関する平成19年度の課題
(1) 入試改革を加速し、全学的な入試改革の推進と業務の適正化を統括するために、アドミッションセンターを設置する。 このセンターは入試の実質的な司令塔の役割をもち、また、AO入試のマネジメントを行う。更に、学生募集のための事業・高大連携事業の企画立案とマネジメントを担当する。
(2) 各学部にスーパーサイエンス特別コース型AO入試を導入
社会のニーズに適合した教育コースを柔軟に設定することが必要であり、学部の枠を超えた特別教育コースを設置し、それらのコースにAO入試を導入する方向で引き続き見直しを行う。
3.平成18年度における学士課程教育改革の成果
平成18年度には研究開発支援経費と同様に、優れた教育改革に対する取り組みを支援する特別経費(愛大GP)を新設した。これには多くの優れた取り組みの応募があり、これまでの学生支援の取り組みや教育に力を傾注してきた実績が表出してきた。このことは平成18年度、文部科学省の特色GP,現代GP、教員養成GPなど、3件が選定されたことにも現れている。
主要な実績は、
1) 教育コーディネーターの全学的配置
平成18年10月17日現在55名の教育コーディネーターを配置
2) 教育改革特別支援経費(愛大GP)の実施
平成18年度から実施 10件採択(学長裁量経費2,500万円の財政支援)
3) 学生寮の改善(新築を視野に入れる)、寮生に対する生活支援
施設マネジメント委員会を設置し、学生宿舎整備専門部会において検討中
4) ・特色GP「FD/SD/TAD三位一体型能力開発」
・現代GP「瀬戸内の山〜里〜海〜人がつながる環境教育〜大学と地域との相互学びあい型環境教育指導者育成カリキュラムの展開〜」
・教員養成GP「1年制大学院が地域の特別支援教育を変える〜教育現場・教育委員会と連携した特別支援教育コーディネーター養成プログラムの構築〜」
4.平成19年度の学士課程教育改革の課題
学士課程教育の在り方については、学内、学部内でも意見の統一がなされておらず、教育改革を進める責任を負っている教育コーディネーターの間でも色々な考えがあることから、教育コーディネーターの全学的配置を機に、具体的課題に取り組みながら大学教育の在り方(高等教育論)について全学で議論し、実行に移せるところから具体化する。
具体的課題は、
1) 学士課程の目的・目標に沿った教育課程の改革
卒業時に学生に身に付けさせる知識、能力、資質を明確にして、そのための初年度から卒業までの教育内容と方法を変革し、新たに組み立てる。これに沿ってアドミッション・ポリシーも再考する必要がある。
2) キャリア教育、インターンシップ、ボランティアなど、モチベーションと自立性を高める教育方法の在り方
3) 社会的成熟、自己防衛能力など社会適応力を高める教育の在り方
4) リメディアル教育、補習教育を含む基礎教育の在り方
5) 教養教育の位置付けと扱い
6) 大学院修士課程教育との区分と連携
7) 本学を卒業・修了した学生に対し、少なくとも3年間は、卒論、ゼミ及び修士課程担当の教員によるフォローアップ体制を作る
5.平成18年度における大学院教育改革の実績
各国立大学において大学院教育の改革が焦眉の課題であり、国際的にアピールできる教育の実質化を実現しなければならない。大学院教育改革については、ワーキンググループ(WG)が検討を開始し、提言をまとめている(12月現在)。WGの議論とは別に、各研究科で検討されてきた。
具体化された事項は、
1) 大学院地域政策特別コース(修士2年)の設置
平成20年4月に法文学研究科(学生定員10名増)総合法政策専攻特別コース「政策・行政コース」を設置することについて関係機関と協議中
2) アジア防災学特別コースの設置(東南・南アジア圏開発途上国対象、修士2年コース)
外国人留学生特別コースの開設を理工学研究科で検討
国費留学生優先配置プログラムに応募(不採択となる)
6.平成19年度における大学院教育改革の課題
大学院教育の要諦は、知識の詰め込み、もちろんこれも必要ではあるが、それだけではなく、暗黙知と呼ばれる、実験やものづくり、分析や解析のノウハウを伝授することにある。知識はどこででも得られるが、その教員、研究室、専攻で蓄積された暗黙知はそれ独特のものであり、愛媛大学でしか得られない。この暗黙知の質の高さが問われることになる。これからの大学院教育は実務的な教育を重視していく必要がある。
当面する課題は、
1) 大学院教育の共通教育
2) 研究者養成と高度専門職養成へ分化したコースの設置検討
3) 専門職養成型大学院の設置検討
II 世界レベルの研究を推進する
本学はこれまで、理系の沿岸環境科学研究センター、地球深部ダイナミクス研究センター、無細胞生命科学工学研究センターの三つの先端研究センターと総合科学研究支援センターを次々に立ち上げ、また、文系の地域創成研究センターをも組織してきた。平成18年度においては、防災情報、再生医療の研究と応用のためのセンターを立ち上げるなど、重点的な支援を強力に推進してきた。
今後、運営費交付金は益々厳しい削減が続くと考えられるので、積極的に外部資金を獲得する必要がある。また、学内では、萌芽的な助走段階の研究にもきめ細かい助成を行ない、重点的に育成する方策をとり、外部資金の獲得のために大学の全組織が積極的に取り組んでいく。
地方国立大学は実際には知的資産の宝庫であり、これを埋もれさせることなく潤沢な外部資金の獲得によって輝くものにしていかなければならない。同時に、教育研究組織としても、また、研究それ自体の信頼性を担保するためにも、研究者として不正行為と研究費の不正使用を排することを徹底しなければならない。
1.平成18年度の実績
(1) 戦略的な外部資金の獲得
研究開発支援経費の活用、学術研究委員会の設置、研究推進専門委員会において科学研究費補助金の申請支援
(2) 科学研究における行動規範に基づく研究活動の不正行為への対応
(3) 防災情報研究センターの設置(平成18年4月1日)
(4) 医学系研究科附属再生医療研究センターの設置(平成18年12月1日)
(5) 3つの学術専門委員会(人材育成、基盤、推進)、及び学部学術研究委員会の設置
2.平成19年度の課題
(1) 研究コーディネーター制度の導入
研究活動は個々の教員の研究者としての自発的動機と興味に任せなければならないが、それが大学における主要な使命(仕事)の一つであることに鑑みれば、大学が教員の研究活動状況や成果に関心を払うのは当然である。そのためこれまで、研究活動や成果を評価する方法を開発し、それに基づく処遇方策を採ってきた。これをもう一歩進めて、研究をより良い方向に発展させるための指導、あるいは、外部資金への応募を進めるための方策や、一層の飛躍を期するための他の研究者との共同の可能性を探る方策の助言など、教員(特に若手)の研究活動に積極的に関わる研究コーディネーター制度を導入する必要がある。研究コーディネーターは、戦略的な外部資金の獲得のために研究内容を解りやすく学外に発信する。研究成果を他の研究と結合し、新しい知の創生を目指すなど、異なる分野の研究者間、大学と外部関係者との連携を図る役割を担うことが期待される。研究コーディネーターが学部学術研究委員会を組織すれば、委員会の役割や意義も一層大きくなる。
同時に、教員個々は研究目的・目標・計画の作成に取り組み、それを地域社会へ発信するシステムを構築することも必要である。
(2) 若手研究者育成・支援
研究開発支援経費の応募枠を、研究歴3年以上の大学院生、COE研究員、ポスドクなどまで拡大する。
(3) グローバルCOEへの採択を目指す取り組み
沿岸環境科学研究センターの申請(平成19年度)
地球深部ダイナミクス研究センター(九州大学との連携)(平成20年度)
(4) 異分野間の連携共同を推進する(医療工学、医学—教育、工学—経営など)
(5) 研究施設(機器)の積極的な解放
登録制による研究者の受入制度、学外専門家の支援体制の構築を図る。
(6) 東アジア古代鉄文化研究センター、宇宙進化研究センターの設置
III 地域からの要請に応える大学
愛媛大学は、地域の中にあって地域から真に信頼され、熱い支持と期待を受け、要請に応えて地域の発展に資することが、大学存在の意義でもある。そのため引き続き、自治体、金融業界、生産企業、NPO、市民団体などと連携協定を結び、多重のネットワークを構築し、地域との連携、地域との意思疎通を図るとともに、地域の人々の現場にあって、大学の組織と大学人が活動することを通じて、地域のニーズを掘り起こし、諸課題を吸収し、要望に応えることにより大学の活力として行く。
また、地域との関係は大学が一方的に資源を提供する関係ではなく、自治体とも緊密に協力しつつ、地域全体を本学のキャンパスと捉え、地域を巻き込んだ教育研究・人材育成・産業振興の態勢を構想して行く。
1.平成18年度の実績
(1) 3市サテライト・オフィスの活用(対策チームの設置、政策・企業研究、相談会、講習・講演会、地域再生計画の具体的プランの検討、共同研究)
3市サテライト・オフィス開設記念シンポジウムの実施
南予対策協議会(南予活性化)の設置
(2) 防災情報研究センターの設置
平成18年4月設置、5月19日設立記念講演会、祝賀会の開催
(3) 大学院地域政策特別コース(修士2年)の設置
平成20年4月に法文学研究科(学生定員10名増)総合法政策専攻特別コース「政策・行政コース」を設置することについて関係機関と協議中
(4) 愛媛大学総合型地域スポーツクラブの発足
平成18年4月発足、各種スポーツプログラムを実施
(5) 南予地域活性化対策の取り組み
全学的な南予活性化対策協議会を設置し、農学部に推進本部を置く(11部会を発足し、検討を開始、宇和島市との月例協議会を開催)
2.平成19年度の課題
(1) 地域連携推進支援経費の新設
学内シーズを外部に発信し、企業や他の機関との共同研究や開発を促進することを目的に、その前段階の研究を支援するための競争的経費(1年限りの支援)を新設
(2) 産業科学技術支援センターの充実
研究コーディネーターによる学外研究者と学部との試験的開発研究(インキュベーション施設として活用)支援
(3) 研究協力会の拡大と支援
(4) 市町村サテライト・オフィスの拡大、既存オフィスの充実
(5) 南予活性化対策の展開
(6) 戦略的な外部資金の獲得
IV 国際的貢献の重点的展開
近年、特に取り組みを強めているように、中国や韓国などアジア諸国、特にネパールやバングラデシュなど経済的に困難な状況におかれている諸国との交流を引き続き重点化していく必要がある。これら、東南・南アジアを中心に厳しい状況におかれている諸国からの留学生の受入れと同時に、本学の学生を派遣し、学習へのモチベーションを高めることも必要である。
1.平成18年度の実績
(1) ネパール5大学との学術交流、学生交流協定の締結及びサテライト・オフィスの設置(平成18年5月28日)
(2) ベトナム、ハノイ大学との学術交流協定の締結(沿岸環境科学研究センター)
(3) 台湾義守大学、その他アジアの大学との交流協定の締結
(4) 国際交流センターの設置(平成18年4月1日)
(5) 校友会海外ネットワーク組織の設立支援
平成18年9月16日 ベトナム支部設立(ハノイ等)
平成18年11月18日 中国支部設立(北京等)
2.平成19年度の課題
(1) 大学院留学生特別コースの設置
アジア防災特別コース、アジア環境学特別コースの設置
特別コースの奨学金制度の新設(寄付金の充実)
(2) 東南・南アジア、東南アジア地域の大学との学術交流協定の推進
インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド
V 大学財政の健全化と自律的な運営
平成18年度、心ならずも給与の引き下げを実施し、人件費削減計画の策定等を実行に移さざるを得ない状況に立たされ、学内すべての組織に苦渋の決断をお願いすることとなったが、これを成し遂げることができた。また、事務系職員の削減に関連して、組織再編・合理化の検討も同時に行い、平成19年4月からの高齢者再雇用制度の導入も目処がついた。とは言え、将来国立大学の財政は一層厳しくなることが予想されるので、経費削減を進めるとともに、教職員のモチベーションを高め、一人一人が創意と情熱をもって仕事に取り組む環境と条件をつくりだす努力が求められる。今後は、従来の国立大学においてほとんど考慮されなかった人材マネジメントの手法を大胆に採り入れ、リーダーの育成、職員の専門化や能力開発を推し進め、少数精鋭の体制を構築することが必要である。具体的には、総合学生サービスセンター(仮称)の設置等による一極集中化の措置を取りつつ、人件費・組織の思い切ったスリム化を図らなければならない。しかし、合理化・人員削減による厳しい状況の中で、精神的に過大な負担がかかり、心のケアを必要とする職員も目立ってくるなど、マイナス面も無視できない。職員間、教員間、教職員間、学生教職員間のコミュニケーションを心がけ、融和を図りつつ、精神的なケア体制をつくる必要がある。このような状況を考慮し、しっかりとした人事マネジメント・システムを早急に創る必要がある。
一方、教員については、学校教育法の改正による職名の変更、組織の改編があり、これに対応する平成19年4月からの体制が整備された。また、助教については新規採用者には原則として任期制が導入される。
平成19年以降の大きな課題は認証評価、中期目標期間終了時の暫定評価への対応である。特に教育改革、大学の運営改革の一層の推進を図ることが求められている。
1.平成18年度の実績
(1) 事務組織の再編
総合学生サービスセンター(仮称)の検討を開始
(2) 人件費の4年間4%削減
人件費削減計画を策定し、実施段階に入る
(3) 教員人事改革
人事委員会の設置、各部局において教員選考の実施細則策定
(4) 教員組織の見直し、愛媛大学の基本方針として助教の任期制導入を決定
2.平成19年度の課題
(1) 人事システム(人材育成、評価を含む人事マネジメント)の改革
(2) 職員、教員、学生間相互の共同と融和
(3) 自律的運営の確立(SDの拡大と高度化)
(4) 環境対策、省エネルギー対策、安全対策
(5) 施設整備
(6) 研究費の不正使用、セクハラ・アカハラの一掃対策
(7) 附属学校園の大学附属化、整備
(8) 認証評価、中期目標期間終了時の暫定評価への対応
(9) 学部の課題—各種委員会の強化
1)教育コーディネーター委員会(学部によっては学務委員会などに相当)
教育改革
学士課程及び大学院修士課程について、教育目的・目標(学士の学位の基準)及び、卒業時に学生が身に付けるべき知識・能力・社会人としての人間力、それに沿った教育課程の在り方とカリキュラムの構造化と個々の授業内容の検討、アドミッション・ポリシーの見直し、アドミッション・ポリシーに対応した入試
2)学術研究委員会(研究コーディネーター委員会)
研究組織の在り方、人材養成、研究プロジェクトの検討、研究のコーディネート(学部内、大学内、内部と外部機関・企業)、研究費申請対応、研究戦略の策定
3)自己点検評価委員会
19年度認証評価、20年度第一期中期目標期間の暫定評価への対応