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マントル遷移層の構成成分を解明!

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)は、財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)との共同研究で、地球のマントル遷移層※と同じ温度と圧力の条件下で、地震波速度精密測定に世界で初めて成功し、マントル遷移層の構成成分を解明しました。

※マントル遷移層…地球内部の深さ410kmと660km付近にある地震学的不連続面(地震波の速度や密度が急激に上昇する場所)によって囲まれた領域。

 地球内部には、全体積の8割を占めるマントルがあり、マントルは「上部マントル」「マントル遷移層」「下部マントル」の3つの領域から成っています。その一つである「マントル遷移層」は、マントル全体の運動や形成過程を知る上で鍵とされてきました。しかし、その構成成分については、上部マントルと同じかんらん石を中心としたかんらん岩で構成されているという説とざくろ石が多い岩石(ピクロジャイト)からできているという二つの説があり、論争が繰り返されてきました。今回の研究では、その論争に決着をつけました。

 この研究は、兵庫県にある「SPring-8」の大型超高圧装置を使用し、19万気圧、1400℃という高温高圧下においた2mm程のマントル候補物質試料(かんらん石とざくろ石の高圧相)に超音波をあて、試料を通過する時間を測定。時間と試料の長さから速度を精密に決定し、得られた速度と地震学的なマントル遷移層の地震波速度を対比させました。その結果、マントル遷移層の上部から中部の領域は、上部マントルと同じかんらん岩からできていることが判明しました。
 しかし、マントル遷移層の下部領域は、かんらん岩ともピクロジャイトとも速度データが一致せず、別の構成成分でできているということが同時に明らかになりました。最も一致していたのが、沈み込んだプレートの主要物質であるハルツバージャイトの速度データであり、このことからマントル遷移層の下部領域は過去に沈み込んだプレートが溜まっている(プレートの墓場)可能性が強いことがわかりました。

 今後の課題については、今回の技術を利用してプレートの上部を占める「海洋地殻物質」の速度を測定することや、測定方法を更に改良し、下部マントル領域(24万気圧以上)での速度を測定し構成成分を解明することで、地球がどのような物質からできているのかを明らかにし、地球の形成過程を明らかにする手がかりを探っていきたいと、地球深部ダイナミクス研究センターの入舩徹男センター長は話していました。

※この研究は、2008年2月14日(木)発行のイギリスの総合学術誌「Nature」に掲載されました。

●●●今回の研究メンバー●●●
 入舩徹男 地球深部ダイナミクス研究センター長
 肥後祐司 (財)高輝度光科学研究センター研究員
 河野義生 地球深部ダイナミクス研究センター研究員
 井上 徹 地球深部ダイナミクス研究センター准教授
 大藤弘明 地球深部ダイナミクス研究センター助教
 舟越賢一 (財)高輝度光科学研究センター副主幹研究員

広報室