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プロテオサイエンスセンター 澤崎教授らが植物ジベレリンの新しい制御機構の発見をNature Communications誌で発表しました【(記者説明会)10月19日(木)】

愛媛大学プロテオサイエンスセンター(PROS)の根本圭一郎特定研究員(現岩手生物工学研究センター)、澤崎達也教授の研究グループは、主要植物ホルモンであるジベレリンの応答がチロシンリン酸化により制御されていることを発見しました。また、大豆製品に豊富に含まれるゲニステインがこのチロシンリン酸化を抑制し、ジベレリン受容体の分解を促進していることを明らかとしました。さらにそれらの因子は、高塩濃度環境下で種子発芽の抑制機構としても機能していることが分かりました。

 ジベレリンは植物の成長、開花の時期、種子発芽の調整や、種なしブドウの作出など主要な農業利用植物ホルモンであり、ジベレリン受容体タンパク質がジベレリン応答の中心的な役割を果たしています。また、豆腐や豆乳などの大豆製品に豊富に含まれるゲニステインは、動物のチロシンリン酸化の触媒酵素を阻害し、植物においてはジベレリン応答を抑制することが知られていました。さらに、タンパク質のチロシン残基のリン酸化は、動物においては様々な生命現象を制御する重要な機構として知られています。植物でも動物と同等にタンパク質のチロシンリン酸化が見つかっていますが、植物におけるチロシンリン酸化の生物学的意義は不明でした。

 本研究グループは、PROSが独自に開発してきたコムギ無細胞系を用いて、ジベレリン受容体タンパク質を分解誘導するGARUタンパク質を見出し、GARUのチロシン残基がTAGK2タンパク質によりリン酸化されることを発見しました。TAGK2によりチロシンリン酸化されたGARUは、ジベレリン受容体タンパク質と相互作用することができなくなり分解誘導できませんが、ゲニステインはTAGK2の活性を抑制するためGARUのチロシンリン酸化を低下させて、その結果、ジベレリン受容体の分解を促進していました。これが、ゲニステインによるジベレリン応答抑制機構でした。また、植物は海水の様な塩分が高い環境下で発芽すると枯死するため、高塩濃度の環境では発芽しない能力を有していますが、GARUはその発芽抑制機構を担っていることも新たに分かりました。

本研究で解明したジベレリン応答制御機構

 主要な植物農薬ホルモンとして利用されるジベレリンは、使うタイミングやジベレリン量を厳密にコントロールする必要があります。本研究の結果より、ジベレリンシグナルの伝達に関与する新規タンパク質GARUおよびTAGK2が見出され、またゲニステインの標的がTAGK2であることが明らかにされました。これらの遺伝子の発現を操作したり、ゲニステインを利用することでジベレリンが関与する植物の成長、開花の時期、種子発芽の調整や、種なしブドウの作出など様々な植物応答を制御できる可能性が期待されます。また、GARU遺伝子を人為的に操作することで、植物種子の発芽を制御できることが期待されます。

 本研究は、愛媛大学プロテオサイエンスセンター、東京理科大学基礎工学部、産業技術総合研究所人工知能研究センター、理化学研究所環境資源科学研究センターとの共同研究としておこなわれました。

 この研究成果は10月17日にオンラインで公表されています。

<プロテオサイエンスセンター>