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プロテオサイエンスセンター 李助教・飯村教授らがHIV感染治療薬の標的分子であるCCR5による骨代謝調節機構の解明をNature Communications誌で発表しました【(記者説明会)12月26日(火)】

愛媛大学プロテオサイエンスセンター バイオイメージング部門の李 智媛 助教、飯村 忠浩 教授らの研究グループは、 HIV感染治療薬の標的分子であるCCR5が骨の代謝を調節していることを解明しました。リンパ球の細胞の表面にはCCR5という分子があり、HIVはこの分子を介して感染します。CCR5阻害薬はHIV感染症の効果的な治療薬となっています。李助教らは、CCR5が骨を吸収する破骨細胞にも存在し、CCR5の機能抑制は破骨細胞の骨吸収能を抑えることを解明しました。さらに、動物実験では、CCR5の機能抑制が骨粗鬆症を抑えることを発見しました。これらの実験観察は、CCR5阻害薬はHIV感染症のみならず、骨粗鬆症を始めとする骨吸収性疾患に対してもメリットをもたらす可能性を明らかにしました。

CCR5阻害薬は、現在、HIV感染者の症状緩和・延命に大きく貢献しています。一方で、CCR5阻害薬の長期服用が、高齢化に伴う運動器疾患(いわゆるロコモーティブ・シンドローム:骨粗鬆症を始めとする骨や関節の病気)に影響する可能性が懸念されていました。

李助教らは、培養したヒトの破骨細胞(骨を溶かす細胞)と骨芽細胞(骨を作る細胞)にCCR5阻害剤を投与し影響を見ました。すると、破骨細胞の骨を吸収する機能が阻害され、骨芽細胞の骨を作る能力には影響がないことが観察できました。次に、CCR5遺伝子を人為的に欠損させたマウス(CCR5欠損マウス)の骨を観察したところ、骨の量は、遺伝的に正常なマウス(野生型マウス)と大きな変化はありませんでした。ところが、野生型マウスとCCR5欠損マウスに、人為的に骨粗鬆症を誘発すると大きな違いが見られました。野生型マウスは骨の量が減って骨粗鬆症になったのですが、CCR5欠損マウスの骨は減りませんでした(下図)。よく調べるとCCR5欠損マウスの破骨細胞は、ヒトの細胞での観察同様に、骨を溶かす機能が悪くなっていました。すなわち、CCR5を阻害しておくと、破骨細胞の機能が低下するため、骨粗鬆症になりにくいと考えられました。

本研究の成果は、CCR5阻害薬の服用は、HIV感染のみならず、骨粗鬆症のような骨吸収性疾患に対しても抵抗性を示すことを実験医学的に証明しました。HIV治療薬として開発されたCCR5阻害薬が、骨粗鬆症治療薬としても効果があるのかどうか、いわゆるドラッグ・リポジショニングへ向けた研究展開や、CCR5に関連する分子を標的に新しい運動器疾患治療薬が開発されることも期待されます。

本研究は、愛媛大学プロテオサイエンスセンター、東京大学大学院医学系研究科、松本歯科大学との共同研究としておこなわれました。

本研究の成果は12月20日にオンラインで公表されています。

 

【NHK NEWS WEB】にて動画配信されました!

HIV薬が骨粗鬆症に有効期待