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大学院理工学研究科の佐藤久子教授と静岡大学との共同論文が英国王立化学会の物理化学系雑誌のPhys.Chem.Chem.Phys.の2018 Hot Articlesに選ばれました

 大学院理工学研究科環境機能科学専攻の佐藤久子教授らの論文(速報)「Intermediate length-scale chirality related to the vibrational circular dichroism intensity enhancement upon fibril formation in a gelation process」が、物理化学系雑誌のPhys.Chem.Chem.Phys.の2018 Hot Articlesに選ばれました。

 本研究は、振動円偏光二色性分光法(VCD法)をゲル化剤分子に適用した時に見出されたシグナルの顕著な増大の原因を、時間ステップVCDによる実験的実証と大規模な量子化学計算を用いて理論的に解明したものです。VCD法とは赤外領域の円二色性(右回りと左回りの円偏光の吸収の差)を測定するキラル分光法の一つです。多数の振動吸収に基づく豊富な情報をあたえるので、他の分光法にはない特色を持っています。しかし残念ながら、通常では得られるシグナルが非常に小さいという本質的な困難があります。そのために測定には長時間を要し、応用できる分子も限られていました。

 佐藤久子教授らは、これまでゲル化に伴い、VCD強度が著しく増大することを見出してきました。このようなシグナル強度の増大を引き起こす原因を解明することができれば、VCD法の新たな応用へと展開できることが期待されます。本研究では、ゲル化剤分子が水素結合により連結し、らせん状のフィブリールとよばれる繊維状の会合体を形成してゆくことに対応して、シグナルが増大し、一定値に飽和してゆくことを実験と大規模理論計算から導きました。このように分子の規則的な配列によってVCDシグナルが増大していくことを初めて理論的に解明しました。

 今まで溶液中に溶けた孤立分子に対して適用されることが多かったVCD法を、これからは分子の会合体へ応用することも視野に入ってきます。例えば、アルツハイマー病の原因となっているアミロイドのようなペプチドオリゴマーの構造をVCD法で解析し、生体中でなぜそのような会合体が形成されるかを明らかにすることもできると期待されます。

Hajime Torii, and Hisako Sato

Phys. Chem. Chem. Phys., 20, 14992-14996 (2018)

(以下,雑誌「Phys. Chem. Chem. Phys.」に掲載されているアブストラクトURL)
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2018/cp/c8cp02121j#!divAbstract