プレスリリース

貝殻が語る深海温泉の旅

愛媛大学大学院農学研究科樋口 富彦准教授は、東京大学大気海洋研究所の矢萩拓也助教、白井厚太朗准教授、狩野泰則准教授らの研究グループに参画し、深海熱水噴出域で採集した笠貝3種の殻を化学分析し、謎に包まれていた幼生期の生育歴を復元しました。その結果、分析した全ての個体が幼生として熱水域を離れ、太陽光の届く表層(200m以浅)もしくはその近くまで泳ぎ、そこで成長したことを示す証拠を得ました。

深海の熱水噴出域には、地球内部から供給されるエネルギーに支えられた独自の生態系が広がっています。熱水噴出域は深海底に点在しているため、貝類や甲殻類がそれらの環境にたどり着くには浮遊幼生期の移動が必須と考えられます。しかし、幼生は大変に小さいため広大な海洋での追跡が難しく、個々の成体がどのような生育歴をもつのかは分かっていませんでした。 今回の発見は、表層の水温や海流、植物プランクトン量などが、深海熱水性動物の分布や進化に大きな影響を与えていることを示唆します。本成果は、深海生態系の連結性評価や、海底資源開発を見据えた海洋保護区設計にも資すると期待されます。

特殊なエビや貝類が生息する深海の温泉
(水深1,920m、南太平洋ラウ海盆 ©JAMSTEC):
貝殻分析により小さな幼生の壮大な旅路を解き明かす

研究成果のポイント

  • 深海熱水域固有の貝類が、浮遊幼生期に海の表層で成長することを示す地球化学的証拠を得ました。
  • 幼生は表層まで遊泳、植物プランクトンを食べ成長した後、深海熱水に戻ると考えられます。
  • 本研究は、海洋表層と深海熱水生態系のつながりを示すと共に、海洋保護区設計にも資すると期待されます。

論文情報

雑誌名:Science Advances
題 名:Gastropod shells record larval migration from deep-sea hydrothermal vents to the euphotic zone
著者名:Takuya Yahagi, Kentrao Tanaka, Tomihiko Higuchi, Kotaro Shirai, Naoto Takahata, Yuji Sano, Shigeaki Kojima, Yasunori Kano
DOI:10.1126/sciadv.adx7045

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愛媛大学 大学院農学研究科
准教授 樋口 富彦