心筋梗塞や心筋炎などに伴う心機能障害では、NLRP3インフラマソームによる炎症や細胞死、その後の心筋リモデリング・線維化が重要と考えられてきました。愛媛大学先端研究院プロテオサイエンスセンター病理学部門/大学院医学系研究科解析病理学講座の倉田美恵講師、増本純也教授、同研究科循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座の山口修教授、兵庫医科大学 医学部 病原微生物学の小椋英樹准教授、石戸聡主任教授らの研究グループは、NLRP3が持続的に活性化する新規マウスを解析しました。その結果、インフラマソーム形成に必須のASCを欠損させて炎症と線維化を著しく改善させても、心室拡大と収縮機能低下が残存することを発見しました。
この成果は、NLRP3による心機能障害には、従来よく知られてきたインフラマソーム依存性炎症だけでは説明できない経路が存在する可能性を示すものです。原因が十分に解明されていない心筋症や心不全の病態理解、新たな治療標的の探索につながることが期待されます。

本研究の成果は、米国免疫学会の学術誌 「The Journal of Immunology」に、 掲載論文で最も革新的かつ影響力の大きいと認められた「Cutting Edge」論文として掲載されました。
研究成果のポイント
- NLRP3が持続的に活性化する新規マウスモデルを作製
研究グループは、NLRP3のgain-of-function変異をもつマウスを作製しました。このマウスでは、若齢期から皮膚病変、発育不良、好中球を主体とした炎症など、持続的なNLRP3活性化に対応する全身性炎症が認められました。 - 長期生存したマウスに心拡大、収縮機能低下、心線維化を確認
長期生存したマウスを解析すると、加齢に伴って心臓が拡大し、心エコー検査で左室内径の拡大と収縮機能の低下が認められました。また、病理組織学的には心筋間質の線維化がみられ、NLRP3の持続的活性化が長期的な心病変と関連することが示されました。 - ASC欠損により全身性炎症と心線維化は著しく改善
この心病変がNLRP3インフラマソームを介して引き起こされるかを検証するため、インフラマソーム形成に必須のアダプタータンパク質ASCを欠損させました。その結果、好中球増加などの全身性炎症は大きく改善し、心線維化もほぼ消失しました。これらの所見から、NLRP3の持続的活性化による炎症と心線維化にはASC依存性インフラマソーム経路が重要であることが確認されました。 - ASCを欠損させても心室拡大と収縮機能低下は残存
一方、ASCを欠損させても、心室拡大と収縮機能低下は改善しませんでした。すなわち、インフラマソーム形成を成立させない条件でも、NLRP3の持続的活性化に伴う心機能障害の一部が残ることが明らかになりました。 - NLRP3の「インフラマソームに依らない作用」を示唆
これらの結果は、NLRP3による心病変には、ASC依存性インフラマソームを介した炎症・線維化に加えて、従来のインフラマソーム依存性炎症では説明できない別のシグナルが存在する可能性を示しています。
論文情報
- 掲載誌:The Journal of Immunology
- タイトル:Cutting Edge: Long-Term Nlrp3 Gain-of-Function Mutation Promotes Cardiac Dysfunction Independent of Inflammasome in Mice
- 和訳題名:長期的なNlrp3機能獲得型変異は、インフラマソーム非依存性の心機能障害を促進する 著者:Mie Kurata, Kayo Takahashi, Naoe Kaneko, Kenji Kameda, Takanori Nakamura, Sho Hosokawa, Kasumi Murakami, Hideki Ogura, Satoshi Ishido, Osamu Yamaguchi, Junya Masumoto*
- 責任著者:愛媛大学先端研究院プロテオサイエンスセンター病理学部門/大学院医学系研究科解析病理学講座 教授 増本 純也
- DOI:10.1093/jimmun/vkag257
