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授業紹介 I Report

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2020.03.17
農産物プロセシング工学
農学部
担当教員:森松 和也 / 対象:農学部食料生産学科2回生~

※掲載内容は取材当時のものです。

 収穫後農産物の生理現象を踏まえ、選別、貯蔵、衛生管理など各種の流通技術を学び、そこから、流通体制の設計を行なう場合の考え方、関連する産業などについて理解する授業です。

授業内容

 この授業は、農学部食料生産学科の専門教育科目の授業で、2回生以上を対象としています。この日は第9回目の講義で「食品の凍結操作」について学ぶものでした。
 「冷蔵、冷凍の違い」と「食品・青果物の冷凍保存における品質劣化」の話から始まりました。品質劣化の「冷凍焼け」とは、「貯蔵期間中に冷凍物表面から乾燥が進行していく現象」であり、それにより、「酸化しやすくなり、酸化が冷凍物の変色・異臭・異味の発生」を引き起こします。すぐに食べないものを冷凍庫へ入れると安心しがちですが、冷凍中も水分が固体から気体へ変化し、徐々に乾燥しているそうです。そして、乾燥により、食品は空気中の酸素と接触しやすくなることで、冷凍物中の脂質などの酸化が進行し、冷凍物の変色・異臭・異味を引き起こす、というしくみです。この理論を、化学式を用いて教員が解説を行いつつ、ポイントでは、学生に質問を投げかけて講義が進められました。
 そして、この「冷凍焼け」のしくみを理解したうえで、その「防止法」へと展開します。冷凍焼けによる酸化の防止法として、①食品を-25℃以下で貯蔵し、温度変化を少なくする、②真空包装・グレーズ処理等を対象食品に施す、といった2つの方法について説明がありました。①は、空気中の蒸気圧が飽和水蒸気圧に達していないときに昇華(個体から気体への変化)が生じること、これには、冷凍物温度と周囲温度との温度差が影響しているため、昇華を防ぐための対処法です。②の真空包装では、密閉により氷の昇華を抑制し食品の乾燥を抑えること、また、物理的に酸素との接触を防ぎ、酸化を防ぐことができます。また、②のグレーズ処理とは、冷凍物の表面に水を散布して、氷の薄い膜を形成させる、処理方法です。氷膜から昇華していくため、乾燥を遅延させ、また、氷膜により酸素との接触を少なくできることで劣化を防ぐものです。
 防止法は①②のほか、「加糖(シロップ浸漬)」「ブランチング(凍結前に加熱処理を行い、青果物内の酵素を失活させる)」「乾燥」「浸透圧脱水(高浸透圧の溶液に青果物を浸すことで、凍結・解凍による破壊を抑制する)」についても解説がありました。
 講義は、このレポートで紹介した以上に専門的な解説が中心で、過去の学習内容を確認しながら、教員から学生へ問題を出し、コミュニケーションをとりながら進められました。学生たちは講義に集中し、指名されるとしっかりと解答する姿がとても印象に残りました。

 

教員からのコメント

 この講義では、収穫後の農産物の品質劣化メカニズムや品質劣化を防止する技術などに関する知識を学びます。
 農産物は収穫後も生きているため、栽培中と同様に呼吸や蒸散が行われます。呼吸により糖類や有機酸等が、蒸散により水分が農産物から失われてしまいます。栽培中であれば、光合成や根による吸収で失われた成分を補うこともできますが、収穫後の農産物では失われたものを補うことはできません。我々が美味しい農産物を食べるためには収穫後の農産物から失われる成分を最小限にする必要、つまり農産物の品質劣化を防止する必要があります。
 農産物の品質劣化は農産物の種類によって大きく異なります。そのため、本講義では収穫後の農産物の生理に関する基礎知識を習得してもらうと共に、農産物の種類に応じた品質劣化防止技術の事例について学んでいきます。本講義を通し、知識の習得だけではなく、実際の生活でも活用できる農産物の保存に関する知恵を身に着けてもらいたいと考えています。

学生からのコメント

 農産物プロセシング工学の授業では、収穫後の農産物を対象とし、貯蔵、選別、衛生管理などに関する流通技術について学びます。授業では植物の呼吸に対する温度・湿度の影響などの基本的な内容から、農産物の種類に応じた適切な貯蔵方法などの専門的な内容まで細かく先生方が教えてくださります。この授業で、農産物の品質を劣化させる流通過程における要因を農産物の特性から考えることができ、農産物の品質劣化が実際にどのように防がれているかを理解することができました。食品に関する知識の暗記だけではなく、理論的に理解を深められるため、今までの高校学習とは違う目線で新しい発見がたくさんあり、今までにない面白さも学べる授業です。