未来の愛大生へ

2017.08.30
転機はいつか訪れる

加 三千宣 准教授

●沿岸環境科学研究センター
●古海洋学・古環境学

 人は、自身の人生の中で大きく飛躍する転機が幾つかあります。
 自分自身に何の価値も見出せず悩んでいた大学時代、私を救ったのは大学4年時のゼミの先生でした。授業には出てこない、成績も良くない、絵に描いたような劣等学生で、おそらくどんな先生から見ても見捨てて当然の学生だったでしょう。そんな私に恩師はいつもこう聞いてくれました。「君の目標は何だ?」「将来の目標は何だ?」と。私は、ある時こう答えました。「実は理学系の大学で自然科学を学びたいんです。」恩師は、「確かな目標に向かって頑張っている人が一番偉いんです。頑張れ。」と励ましてくれました。そのお陰でがむしゃらに受験勉強をしなおし、4年通った教育学部から一転して、理学部地球学科に進みました。

 研究者としての転機は、ポストドクター時代、ある先生との出会いでした。「加さん、私と一緒に海底の泥の中のイワシの鱗を探してもらえませんか。」という提案でした。当時、私のような低学歴で決して優秀とは言いがたい人が研究者として競争に勝ち抜くためには、自身の研究領域の殻を打ち破る必要があると感じ、自分にしかできない研究を探し求めていました。提案された研究は、国際的にもほとんど解明が進んでいなかった、過去数千年間にわたる魚類個体群の動態を魚鱗化石から解明するというものでした。これだけ科学が進歩しても、1000年前に魚がどれ程いたか、わかっていなかったわけです。世界でも数例しかないイワシ類の魚鱗記録が話題を呼び、新聞一面で報道されるインパクトのある研究成果に繋がりました。その後も幾つかの劇的な出会いが私を支え、念願の常勤の研究職に付けるという転機も訪れました。
 人生の大きな転機というのは、どんなに恵まれない境遇でも諦めず前に向かって進んでいれば素晴らしい出会いとともに必ずいつか訪れるのだと思います。

「サイエンスを志す君たち、諦めずその目標に向かって進め」と言いたい。

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