!

重要なお知らせ

未来の愛大生へ

2023.12.20
古典文学を研究するということ

田中 尚子 教授

●法文学部 人文社会学科
●日本文学(中世)・比較文学

みなさんは古典文学研究に対してどんなイメージを持っていますか。昔の作品をただ読むだけで、そこに新たな発見などあるはずもないと思っていませんか。ですが、決してそんなことはないのです。中世に成立した軍記、『太平記』を例にとってみましょう。『太平記』では脇屋義助という人物が亡くなった際、「孔明籌筆駅に死して、呉・魏たよりを得し事を愁へしが如く」と、中国三国時代の諸葛孔明の死に準えるのですが、この一節については、孔明が亡くなった地は五丈原だから『太平記』の理解は間違っている、とされてきました。たしかに『三国志』や『三国志演義』などを読む限りではそうなります。しかし中国の諸文献をさらに追いかけてみると、「籌筆駅」という題で孔明の死を詠み込んだ漢詩が見付かるのです。漢籍に精通し、様々な文献に目を通していたからこそ、『太平記』はこのように書いたわけですね。つまり、中国の歴史をわかっていないと言われてきたくだりが、実は典拠に基づいた、正確な記述だったことが、研究によって明らかとなったのです。古典にはまだまだ新たな発見の可能性があるということです。

ところで、文学研究は基本的には個人で行うものなのですが、時にグループ活動も重要になります。私が担当する演習では輪読という形をとり、歴史や思想、他国の文学、さらには漫画やアニメといったサブカルチャーなど、参加者それぞれが興味を持つ分野・要素と関連付けながら、テキストを掘り下げていきます。そうすることで、1人では気づけなかった読み、新たな解釈にたどり着けるのです。3人寄れば文殊の知恵ならぬゼミ生30人寄れば……ですね。

古典文学研究は古い物をそのまま受けとめるだけという思いを一旦捨てた上で、作品と向き合ってみませんか。今までとは違う古典文学の姿が見えてくるはずです。

MORE MESSAGE