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平成21年度科学研究費補助金採択 〜大学院理工学研究科 粟木久光教授〜

平成21年度科学研究費補助金に採択された粟木久光大学院理工学研究科教授からメッセージをいただきました。

科学研究費補助金 基盤研究(A) 平成21年度採択課題
硬X線観測によるCompton Thick活動銀河核の解明
大学院理工学研究科 教授 粟木 久光

 活動銀河核(Active Galactic Nucleus, 以下「AGN」)は、銀河の中心に存在する非常に明るく輝くコンパクトな領域のことで、数%程度の銀河で見られます。その明るさは、私たちの住む天の川銀河全体の100倍以上に達するものまであります。この活動源になっているのが、AGN中心に存在すると考えられている超巨大ブラックホールです。ここに物質が降着することで、その物質の持つ重力エネルギーが解放され膨大なエネルギーを作ることができます。しかし、ブラックホールを取り巻く環境がどうなっているのか、また、どのように誕生し成長したのかなど、AGNの構造と進化については未だ謎が多く、現代天文学が解明すべき最重要課題の一つとなっています。
 私たちが研究しているCompton Thick AGNは、大量の塵・ガス等によってAGN中心部が隠されている天体です。AGNは強いX線放射源としても知られていますが、大量の物質で隠されているため中心部からのX線はほとんど見えず、中心部の光で照らされた中心部周辺の領域からの光だけが見えます。コロナグラフのように中心の明るい光を遮ることで、その周辺の構造、すなわち、AGNの構造を観測することができます。また、Compton Thick AGNはAGNの大半を占めており、AGN全般の性質を理解するために避けて通れない天体です。しかし、周辺からのX線放射は複雑で、X線観測でよく使われている10キロ電子ボルト以下のエネルギー帯だけでは、その解明が非常に困難です。さらに、このエネルギー帯では、中心部がほぼ完全に隠されているため、AGNの活動性を測定できません。このためCompton Thick AGNの素性は、これまでほとんど分かりませんでした。
 この素性を解明するには、透過力の強い硬X線帯を含む広帯域観測が不可欠です。今回の申請課題では、2005年に打上げられた日本のX線天文衛星「すざく」(下図参照)を使ったCompton Thick AGNの解明、ならびに、AGN進化を解明するために必要な高精度硬X線望遠鏡の基盤開発を目的としています。「すざく」は透過力の強い10キロ電子ボルト以上の硬X線帯域での観測能力を有しており、広帯域スペクトルの取得が特長です。本研究により、AGNの構造と進化の研究が大いに進むものと思います。
 科研費申請にあたって留意すべき点については、これまでに述べつくされている感がありますが、あえて言うならば、推敲をしっかり行うことです。重複した表現をできるだけさけるなど、丁寧に納得がいくまで推敲してください。ただ、たまには2、3日寝かせて、頭を冷やしてからやった方が良いかもしれません。
 最後に、今回の申請課題の基礎研究は、愛媛大学の研究開発支援経費の支援を受けて行ったもので、この場を借りて感謝申し上げます。