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プロテオサイエンスセンター・バイオイメージング部門の飯村忠浩教授らの共同研究チームが生体組織の成長リズムを探索する新技術を開発しました

 本学プロテオサイエンスセンター・バイオイメージング部門の飯村忠浩教授らの共同研究チームが、組織の成長リズムを探索する新技術を開発しました。個体の発生や組織形成、がん組織の成長には、それを構築する個々の細胞が増殖することが必要です。しかしながら、個々の細胞は非常にランダムに増殖するため、細胞が集まってできる組織の成長リズムを探るのは困難でした。飯村教授らの共同研究グループは、ゼブラフィッシュという小型脊椎動物の発生過程を対象に、蛍光ライブイメージングと数理モデルを組み合わせた手法で、組織形成時の周期的な調節過程を明らかにしました。この手法を発展させることで、がん細胞の特性や抗ガン剤の効果判定に新たな解析法を提案できると期待されます。  本研究成果は、米国科学誌 PLOS Computational Biology に掲載され、オンライン版で公開されています(平成26年12月4日(日本時間))。

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【図1】細胞周期可視化蛍光プローブFucciによるゼブラ魚体軸形成過程のライブイメージング

(A)Fucci システムの概要。Fucci を発現する細胞の核が、細胞増殖休止期(G1期)で赤色の、細胞増殖分裂期(S/G2/M期)で緑色の蛍光を発する。 (B)ゼブラ魚胚の全身蛍光画像。
(C)ゼブラ魚胚体軸形成過程のライブイメージング画像。白のスケールバーは100μm。

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【図2】数理モデルの概要

(A)確率論に基づき数理モデルを構築。細胞増殖休止期(G1期:赤)と細胞増殖分裂期 (S/G2/M期:緑)の細胞をデジタル化(2値化)して表し、ある一定の確率で休止期から増殖分裂期への移行(G1/S転移:赤→緑)が起こるとするモデル。
(B)ゼブラフィッシュ胚の組織成長が、頭側から尾側(図1Cの左から右)へ成長するのにともなって、ある細胞集団の休止期から増殖分裂期への移行(G1/S転移)が、波のように図1Cの左から右へ時間とともに移動する。この波のリズムを数学的に表現するため関数f(i、t)を導入し、コンピュータ上でシミュレーション実験を行った。

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【図3】開発した新手法と生物学的発見の概要

(A)新手法のフローチャート。(1)定量的蛍光イメージング。(2)数理モデルの確立とシミュレーション実験。(3)モデル選択による、実測(イメージングからのデータ)とシミュレーション実験結果の比較。これらの連続した3つのプロセスを実行することにより、組織成長リズムを探索する。
(B)今回の生物学的発見。胚発生期の体の軸を構成する脊索と呼ばれる組織は、中胚葉性の組織で将来の脊椎発生に関わる。本研究成果から、この成長期の脊索には、休止期の細胞を分裂増殖期へと移行させる領域(G1/S転移の窓)が存在し、いわば、この「細胞分裂増殖の窓」は、ほぼ60分周期で組織成長の方向へ移動することが明らかとなった。

掲載誌

PLOS Computational Biology

論文目録

Live imaging-based model selection reveals periodic regulation of the stochastic g1/s phase transition in vertebrate axial development.
(和訳)ライブイメージングと数理モデルによる脊椎動物体軸発生の周期的調節の解明

共同研究者

愛媛大学医学部附属病院先端医療創生センター    助教 齋藤 卓
愛媛大学大学院医学系研究科分子病態医学講座  教授 今村 健志
(独)理化学研究所脳科学総合研究センター     研究員 杉山 真由
            〃                   チームリーダー 宮脇 敦史

研究の概要(PDFファイル 846KB)