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大学院農学研究科の渡辺誠也教授らの研究グループが、アミノ酸配列の相同性より遺伝子の位置関係を重視したタンパク質機能推定の有用性を実証しました

 大学院農学研究科の渡辺誠也教授(沿岸環境科学研究センター教授兼任)らの研究グループは、機能未知タンパク質の機能推定の際、機能既知タンパク質とのアミノ酸配列の相同性(“見かけ”)よりその遺伝子のゲノム上での位置関係(“周り”)を重視することが有用であることを実証しました。
 本研究成果は、2016年12月8日にNature Publishing Groupの発行する学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載され、2016年12月9日付愛媛新聞総合面に掲載されました。

 アミノ酸配列に相同性があるタンパク質(酵素)は、タンパク質ファミリーを形成します。さらにその中では、類似した機能や反応様式を持つメンバーがサブファミリーを形成しています。これは、進化の過程で単一祖先の遺伝子が重複することでタンパク質ファミリーが生じたためと考えられています。
 アコニターゼファミリーには、4つのサブファミリーが存在しています。このうち、アコニターゼ、ホモアコニターゼ、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼの3つについては、基質の構造および反応様式ともよく似ています。これに対しアコニターゼX(サブファミリー)には既知の活性が見られないことから、これまで機能未知タンパク質に分類されてきました。
 一方、渡辺教授らは細菌のトランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(T4LHyp)やトランス-3-ヒドロキシ-L-プロリン(T3LHyp)の代謝経路の解明を行う過程で、アコニターゼX遺伝子がこうしたL-ヒドロキシプロリン代謝遺伝子が集まったクラスター内にしばしば位置することに注目しました。そこで、T4LHypやT3LHyp以外の多数のL-ヒドロキシプロリン化合物をアコニターゼXの基質候補として与えてみたところ、シス-3-ヒドロキシ-L-プロリン(C3LHyp)のみが速やかに消費されました。さらにその後の反応生成物の分析から、アコニターゼXがC3LHyp脱水酵素として機能することが分かりました。
 アミノ酸配列との相同性を重視する従来の研究手法では、アコニターゼXの基質としてC3LHypを選択する必然性は皆無であり、本法は現在のタンパク質機能推定に新たな一石を投じると期待されます。

 本研究の一部は、JSPS科学研究費補助金基盤研究(C)(No. 25440049及び16K07297;研究代表者 渡辺誠也)の支援を受けて行われました。

見かけより周りに注目?!

見かけより周りに注目?!

論文情報

掲載誌:Scientific Reports 6:38720 (2016), DOI: 10.1038/srep38720
題  名:Functional characterization of aconitase X as a cis-3-hydroxy-L-proline
       dehydratase.
著   者:Seiya Watanabe1,2,3, Kunihiko Tajima4, Satoshi Fujii5, Fumiyasu Fukumori6,
       Ryotaro Hara7, Rio Fukuda2, Mao Miyazaki2, Kuniki Kino7,8, Yasuo Watanabe1,2

1 Department of Bioscience, Graduate School of Agriculture, Ehime University, Ehime,
 Japan
2 Faculty of Agriculture, Ehime University, Ehime, Japan
3 Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University, Ehime, Japan
4 Department of Bio-molecular Engineering, Graduate School of Science and Technology,
 Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan
5 Faculty of Frontiers of Innovative Research in Science and Technology (FIRST), Konan
 University, Kobe, Japan
6 Faculty of Food and Nutritional Sciences, Toyo University, Gunma, Japan
7 Research Institute for Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, Japan
8 Department of Applied Chemistry, Faculty of Science and Engineering, Waseda
 University, Tokyo, Japan

プレスリリース資料はこちら(PDFファイル 482KB)