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お知らせ

教育学部≪理科教育講座大橋淳史准教授≫が高等学校向けの化学教育教材を開発しました

教育学部理科教育講座の大橋淳史准教授が開発した高等学校向け教材が株式会社ナリカより市販されることになりました。

図1 充填型結晶模型キットの写真です

図1 充填型結晶模型キット

 

充填型結晶模型キット

http://www.rika.com/product/prod_detail1.php?catalog_no=M60-2649

 

【概要】

金属結晶構造は、化学基礎などで学習しセンター試験でも出題される重要な内容ですが高校生がとても苦手とする分野のひとつです。剛体球と見なした原子の空間的な配置をイメージして、3つの違った剛体球の並び方、体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造を見つけ出すことはとてもむずかしいところです。さらに、それぞれの単位格子とよばれる基本構造を理解し、単位格子中の原子数、原子の密度、原子の占有率(充填率)を数学的に考える必要があります。これらをすべて頭のなかでイメージする必要があることが、高校生が金属結晶構造を苦手とする理由でしょう。そこで大橋准教授は、体感的に金属結晶構造を学ぶ教材を開発しました。この教材のもっとも大きな特徴は、充填率を実験的に決定することができる点です。高校生の苦手分野を克服する教材として期待されます。

 

1 金属結晶構造の学習内容

金属結晶は、金属原子を剛体球(硬い球)として考え、剛体球が空間的にどのように並ぶのかという数学的な問題でもあります。球をもっとも密(みつ)に並べる方法は最密充填構造(さいみつじゅうてんこうぞう)とよばれています。最密充填構造にはふたつの種類があり、片方は面心立方格子、もう片方は六方最密充填構造とよばれています。そして、これよりも密度の低い並べ方に体心立方格子があります。これらの結晶構造中で金属原子が占める割合を充填率とよび、最密充填構造は74%、体心立方格子は68%になることが知られています。高等学校では、この金属結晶構造について以下の内容を学習します。(1)体心立方格子、面心立方格子、六方最密充填構造の3つの結晶構造があること(2)それぞれの結晶構造の密度の計算方法(3)それぞれの結晶構造の充填率の計算。これらはいずれも数学的計算で求められるため、とくに高等学校第1学年の化学基礎で習うと「わからない」と思いがちな分野です。一方で、高校生の理解度が低いため、センター試験を含めて大学受験(と教員採用試験)では度々出題される問題でもあります。

 

2 教材開発のポイント

理解度が低く、出題率が比較的高いということは単純に言えば、金属結晶構造を得意分野にできれば大学受験に大きなアドバンテージがあることになります。そのため、たくさんの金属結晶構造のモデル教材が提案されています。しかしながら、これまでのモデル教材は充填率を実験的に決定することができませんでした。そこで、充填率を実験的に決定できる教材を開発しようというのが、この研究の始まりでした。このモデルの開発の詳細については、米国化学会のJournal of Chemical Education誌に論文として公開しています。

Using Latex Balls and Acrylic Resin Plates To Investigate the Stacking Arrangement and Packing Efficiency of Metal Crystals

http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ed5006954

 

3 多くの高校生に使ってほしい

論文も公開されましたので、多くの高校生に使ってほしいと考えています。しかしながら、私は元々専門の化学屋ですので、学校現場には繋がりがありません。なかなかこうした研究成果が出たことを多くの学校や先生に知っていただくことに苦労することになりました。また、私の論文は、生徒が自作するという前提で提案していますが、学校現場では自作する時間が取りづらいようです。そこで、教材販売会社ナリカに相談して、工作は最小限に収まる教材としてキット販売していただくことで、多くの高校生に使ってもらえるようにしました。お値段は少々しますが、高校生が苦手とする分野への有効な教材だと思います。是非ご利用ください。