プレスリリース

絶滅危惧種・ミヤコサワガニの局所スケールでの遺伝的隔離と多様性の減少が明らかに
―保全に向けた基盤情報の提供に貢献―

愛媛大学先端研究院沿岸環境科学研究センターの濱本耕平助教が所属する、頼末武史准教授(兵庫県立大学兼兵庫県立人と自然の博物館)、井口亮研究チーム長(産業技術総合研究所ネイチャーポジティブ技術実装研究センター)、安田仁奈教授(東京大学)、高田健司博士(東京大学)、藤田喜久教授(沖縄県立芸術大学)らの研究グループは、沖縄県・宮古島にのみ生息し、絶滅の危機に瀕しているミヤコサワガニが、およそ5キロメートルの範囲内にある集団同士で交流することなく、互いに隔離された状態にあり、遺伝的多様性も低いことを明らかにしました。本研究成果は2026年4月22日に、国際科学誌「Conservation Genetics」にオンライン掲載されました。

本研究のポイント

ミヤコサワガニ(Geothelphusa miyakoensis) は、沖縄県宮古島にのみ生息する、純淡水性のカニです。本種の生息地は、島の開発による生息地の分断などの影響で、わずか3 地域の湧水地周辺に限られています。そのため、環境省のレッドリストにて「絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)」、沖縄県のレッドデータブックにて「絶滅危惧Ⅰ類(CR)」と評価されており、また、沖縄県の天然記念物にも指定されています。このように、ミヤコサワガニの保全優先度は極めて高く、各個体群の存続可能性を早急に評価する必要がありました。

本研究では、3地域の湧水地で本種の脚の一部からDNAサンプルを採取しました。なお、サンプリング後はすべての個体を生存したまま放流しました。これらの試料を用いて、ミトコンドリアDNAの部分塩基配列およびゲノム全域の一塩基多型に基づく遺伝子解析を行った結果、これらの個体群間には遺伝的分化が認められ、相互の遺伝的な交流が著しく制限されていることが示されました。特に、本種の生息地の1つは約80平方メートルと限られ、遺伝的多様性も極端に低かったため、特別な注意が必要であると考えられます。

今後は、残された生息地を保全し、遺伝的多様性と個体群動態の継続的なモニタリングを進めていくと共に、残された生息地を保護区として設定するなど、適切な保全対策を講じることが望まれます。

論文情報

掲載誌:Conservation Genetics
タイトル:Isolated island endemic crabs: Fine-scale genetic population structure of an endangered freshwater crab, Geothelphusa miyakoensis(隔離された島固有のカニ:ミヤコサワガニの局所スケールでの遺伝的集団構造)
著者:Takefumi Yorisue, Akira Iguchi, Miyuki Nishijima, Kodai Gibu, Saki Higa, Nina Yasuda, Kenji Takata, Kohei Hamamoto, Yoshihisa Fujita(頼末武史、井口亮、西島美由紀、儀武滉大、比嘉咲、安田仁奈、高田健司、濱本耕平、藤田喜久)
DOI:https://doi.org/10.1007/s10592-026-01785-8

お問い合わせは、お気軽に下記までお寄せください。

愛媛大学先端研究院沿岸環境科学研究センター
助教 濱本 耕平
TEL:089-927-8554
Mail:hamamoto.kohei.fy@ehime-u.ac.jp