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授業紹介 I Report

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2021.10.15
発生学
理学部
担当教員:理学部 高田 裕美 准教授  / 対象:理学部理学科2年生~

※掲載内容は取材当時のものです。

 この授業は、理学部理学科の2年生を対象とした全15回の授業です。本授業を通じて、精子や卵の形成過程、受精のしくみ、初期発生における胚細胞の特徴、細胞間の相互作用、様々なタイプの細胞への分化など、一個の受精卵から一個体が形成される過程及び様々な動物の発生様式について学びます。

授業内容

 授業は、基本的には非同期型による遠隔講義形式で行われていて、音声付きのプレゼンテーションと解説内容をまとめた文章ファイルが提示され、授業終了後には、毎回自分の理解度を確認するための課題があります。また、発生学講義において使用する専門用語の英語表記も同時に学ぶ内容となっており、その確認テストも随時実施されています。

 取材を行った授業では、動物の発生について学んでおり、動物の発生は、受精から始まり次世代へと続くため環状で示されること、それを「生活環」と呼ぶことについて説明がありました。また、その中で、受精(fertilization)・卵割(cleavage)・原腸形成(gastrulation)の過程を初期発生と呼び、それぞれの過程でどのような変化が起こっているかの解説がありました。

 例えば、ヒトでは、1つの細胞である受精卵から、段階的に約200種類の細胞に分化して身体を形成していき、細胞の未来を左右する段階としての「(発生運命の)特定化(specification)」「決定(determination)」「分化(differentiation)」の3つについて説明がありました。しかし、解明されている事もあれば、生殖・再生・進化等についてはまだまだ多くの謎も残されており、遺伝学や解剖学、癌研究や免疫学など、あらゆる分野の生物学を理解するためにも、探求し続ける必要があるとのメッセージが受講生に送られました。

 取材を通じて、この授業で、発生生物学の基礎である「初期発生の基本パターン」や「さまざまな動物の初期発生」などについて学び、まだ解明されていないさまざまな謎を解き明かすための土台を作ることで、その先にある癌研究や遺伝学といった医学研究の分野へ繋がり、そこでの新たな発見や技術の開発などによって、私たちにも良い成果が還元される可能性があるのではないかと感じました。そして、そこには、更に未来へと続く「環」があるように思いました。

 

教員からのコメント

 発生学は高校の生物学でもお馴染みの分野ですが、受精卵という1つの細胞が分裂することによって多細胞になり、さらに立体的な細胞移動による形態変化を起こして個体が形成される過程で、それぞれの時期に細胞内でさまざまな分子が複雑に相互作用したり異なる細胞間でコミュニケーションを取ったりと、複雑な過程が多く難しいと敬遠されがちな分野です。時折、受講生から、「なぜこんな面倒なことを勉強しなければならないのか」と言う質問を受けることがあります。その答えとして私は「興味のない人は無理に勉強しなくても良い」と伝えるのですが、その時に一言添えることにしています。発生過程は現存の生物が全て経験していることです。もちろん自分自身もその例外ではありません。自分の体が出来上がる過程でどのようなことが起こったのかを知りたいと思いませんか。もちろん複雑だからこそ面白いと思う人も多くいます。私自身も推理小説の謎解きのように、どのような発生現象がどのような要因によって引き起こされるのか、その結果によってどのように次の現象が引き起こされるのか因果関係を知ることにとても強い興味を覚えます。

 発生学は比較的古くから研究されてきた分野です。古くはアリストテレスの時代まで遡ります。昔から生き物がどのように生じてくるのかと言うのは多くの人の興味の対象となっていました。古くから行われてきた発生学的研究は、胚がどのように発生するかを研究するため胚発生学と呼ばれます。動物の個体発生は受精から始まり、一旦発生が始まると動物の種ごとに決められた過程が忠実に再現されます。分類学的に近い種ではよく似た発生過程を経てよく似た構造を持つ体を形成します。近年では、分子生物学や遺伝学と胚発生学の知見を組み合わせて、発生現象の分子メカニズムにアプローチする発生生物学が主流となっています。この授業では、発生生物学を理解する上で必要となる基礎的な知識と代表的な動物の初期発生を学び、動物の体がどのように形成されるのかを理解することを目標としています。

 

学生からのコメント

理学部理学科 村上 友理 さん

 この授業では、昆虫から脊椎動物までの様々な動物の発生を網羅的に学ぶことで、昆虫と両生類、四肢動物とそれ以外の動物など、各動物の発生を比較しながら理解することができました。そのため、各動物の共通点や相違点を知ることができ、生物って面白いなと感じました。また、それら共通点等を見つけるための実験手法についても詳しく解説されており、3年生後期から始まる研究室配属に向けて、研究活動のイメージが湧きました。発生学では、発生現象そのものを学ぶというのも面白いですが、発生学を利用して生物がどのように進化してきたのかを考えることもできます。ですので、生物の進化に関心がある人にとっては、興味深い授業内容だと思います。

 授業形式は非同期であるため、自分の都合の良い時間帯に受講することができ、計画的に授業を進めることができます。また、毎回の授業ごとに授業の復習を兼ねた小レポートが課されていたため、どこを学ぶべきなのか要点を整理しやすかったです。