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重要なお知らせ

未来の愛大生へ

2021.02.03
研究はアイデア勝負

山下 浩 准教授

●大学院理工学研究科
●分析化学

 物質が混合状態で存在しているところから、ターゲット元素を選択的に分離・回収する手法として溶媒抽出法があります。実験室レベルでは、分液ロートと呼ばれるガラス容器に、混合状態のものを酸に溶解して水溶液とし、油相中にターゲット元素と安定な結合をする有機化合物を入れ、この2液が入った分液ロート自体をよく振ることによって、水相と油相の界面が多数創出されて、効率よく油相のほうにターゲット元素が移動し、混合物から選択的にターゲット元素を取り出すことができます。工業レベルでは、水相と油相が混在している溶液に多孔板を多数枚入れ、これをモーターなどの動力を用いて上下に振動させることによって水相と油相の界面が多数創出されて溶媒抽出が完結します。

 私は、動力を用いなくても溶媒抽出ができないものか、考えていました。ある時、円筒菅内に充填物を入れ、塔頂から塔底部に向かって水相を流しながら、同時に塔底部から塔頂に向かって油相を流すことができたら動力を必要とせず、充填物間空隙をこの2液がアメーバーのように形を変えながら流れていくのではないかと思い当たりました。充填物の形状や大きさなどを種々変えて、動力を必要としないHIMEカラム(High-throughput rare Metals static Extraction Column)(特許第6058789号)を完成させることができました。現在は、例えば火力発電所から大量に出てくる燃焼煤からバナジウムを効率よく取り出すという実用化試験を行っています。これが実用化されれば、電気の安定供給に必要不可欠な2次電池であるバナジウムレドックスフロー電池を安価に提供することができます。

 私が所属しています工学部で行っている研究は、産学連携により、社会のニーズを満たすものばかりです。自然現象に対して、どうしてこのようなことが起こるのかと疑問を抱き、それを工業化に結び付けるアイデアが必要です。皆さんも、愛媛大学に入学し、一緒に研究しませんか。

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