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重要なお知らせ

未来の愛大生へ

2021.12.07
君の基質は?

渡辺 誠也 教授

●農学部生命機能学科
●生化学

 微生物の多くは肉眼で見ることができませんが、100oCを超える深海の熱水中など過酷な環境いるものや有毒物質を分解できるものも知られています。その能力はゲノムDNAに書き込まれている遺伝子から作られるタンパク質(酵素)によるものです。技術革新により長大な微生物のゲノムDNA解読が容易になった現在では、酵素そのものよりも遺伝子のほうが先に分かる時代になりました。一方で、膨大な数の「機能未知遺伝子」がデータベースに埋もれています。

 酵素は、基質と呼ばれる特定の化合物と化学反応する触媒です。遺伝子がありそれが酵素として働くならば、必然的に基質が存在し細胞内では実際にその物質と出会っているということになります。酵素にいろいろな化合物を与えては測定装置と“にらめっこ”する気の遠くなるような作業を繰り返していきます。そして、ある化合物を加えたとき突然、画面の数値が動き出し反応が始まるときがあり、そのときの興奮と感動は何物にも替え難いものです。さしずめ、数年前にヒットした映画「君の名は」ならぬ、「君の基質は?」といったところです。

このような研究テーマに行きついたのは必然ではなく偶然ですが、幼少期から生物を研究したいという漠然としたイメージだけはありました。思い返してみるとこれはいろいろな生き物を飼っていたことが大きく、実は今でもウサギや松山市郊外で採ってきた魚などが大学の部屋におり、よい気分転換と話し相手(?)になっています。また、生き物に対する謙虚な気持ちを忘れないようにするためにも役立っています。どんなことでもそうですが、モチベーションと好奇心は壁を乗り越えるための一番の特効薬ですから、これから進路を選択しようとする皆さんも是非大切にして下さい。

理学部・農学部いずれにもバイオを研究する分野(学科)がありますが、両者の違いは「理学部は知的好奇心のおもむくままに研究できるところ(基礎研究)」「農学部は人間や地球への貢献が求められるところ(応用研究重視)」ではないかと考えています。単純に比較することはできませんが、持続可能な社会の構築が急がれている現在、農学部発のバイオ研究の重要性と期待度はこれまでになく高まっています。皆さんが大きな希望と野心を持って農学部に入学してきてくれるのを待っています。

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