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科学イノベーション挑戦講座受講生が「物質の性質と分子の構造の解明」に挑戦しました【1月10日(土)】

 平成27年1月10日(土)、科学イノベーション挑戦講座受講生が「物質の性質と分子の構造の解明」に挑戦しました。科学イノベーション挑戦講座は、科学技術振興機構次世代科学者育成プログラムメニューB採択事業として、昨年度から実施されています。本年度は、昨年度から参加している5人の初年度受講生に加えて、新たに9人の受講生を迎え、総勢15人の受講生が先進的な科学研究に従事しています。
 今回は、計算化学とフーリエ変換赤外吸光光度計を用いて、物質の性質に分子の構造がどのように関係しているのかを解明しました。物質の性質には、分子の構造が関わっています。そこで、分子構造がどのように物質の性質を表しているのかについて、Wavefunction Inc.のiSpartanを利用した計算化学から考えました。iSpartanは、分子をBall&Stickモデル、CPKモデルなどの方法で自由に描画し、3D表示することのできる分子構造の学習アプリで、登録された分子の赤外吸光度、核磁気共鳴を表示することができます。
 そこで、本講座では、中学校1学年で学習する「プラスチックの性質」から代表的な5種類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を題材に、iSpartanで分子の構造を描画し、赤外吸光度から分子の構造がどのように物質の性質に影響しているのかを考えました。アルキル鎖のみであるPEと、アルキル差に置換基があるPP、PVC、PSとを比較すると、PEは柔らかく、PP、PVC、PSは硬い性質があるのは、置換基によるポリマーの運動性の違いに起因するのかどうか、またメチル基、塩素、ベンゼン環と置換基の種類によってプラスチックの性質に違いが表れる理由は何に起因するのかを、描画したモデルを用いて考察しました。

 次に、受講生は、iSpartanを用いて、それぞれのプラスチックの原料となる、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、スチレンを描画し、それぞれの赤外吸光度から、分子の構造について考えました。学校教育では、分子とは動きのない存在のように扱われますが、共有結合も含めて分子は運動する存在です。そこで、赤外吸光度から、どのエネルギーのときに結合のどの部分が動くのか、またその特徴から赤外吸光度を測定することで、分子の構造を同定できることを学びました。そして、実際に、フーリエ変換赤外吸光光度計を用いて、5つのプラスチックの測定を行い、それぞれのプラスチックの同定に挑戦しました。密度や燃焼性から分類するプラスチックを先端科学的手法である機器分析と計算化学から同定する本内容は、大学レベルの挑戦であるため、極めて難しい内容であったにも関わらず、受講生たちは頭を悩ませながらがんばりました。

科学イノベーション挑戦講座のサイト