yakushizin_sam この授業では、現代人の死因の第一位である「がん」という病気を通じ、生命の意義を考えます。

 

 

授業内容

 この授業は、「高大連携プログラム」の一環で行われており、今回は愛媛県立松山南高等学校理数科の2年生40人が参加しました。

 yakushizin_1授業の冒頭で、教員が生徒たちに「日本人の死亡原因で一番多いのは何か?」と質問し、がんで死亡する人の割合を「今このクラスにいる2人に1人はがんになる」という分かりやすい表現で説明しました。
 がんは遺伝子に異常が起こり、細胞が無限に増加する現象で、異常は年齢が進むほど起こりやすくなります。教員は、日本人男性で死亡率が高い「肺がん」に焦点を当て、その原因は2〜3割がタバコであると力説し、生徒たちが将来がんにならないために、「たばこを吸わない・吸わせない」「たばこを吸う環境に身を置かない」というメッセージを送りました。

yakushizin_2 続いて、がんの治癒率は種類によって様々であるが、近年、多くのがんが治療によってコントロール可能になっていることが示されました。その一つの方法として、抗がん剤によるがん治療の説明がありました。
 抗がん剤は、90年代頃から多くの新薬が開発されています。ただ、肺がんに即効性があるとして開発された抗がん剤が、副作用として肺がんよりも進行性のある間質性肺炎を引き起こしたという実例を挙げ、抗がん剤による治療には、抗腫瘍効果というベネフィットと副作用というリスクの両方を考慮する必要があると話がありました。
 生徒たちは、抗がん剤には非常に多くの副作用があり、がん患者は肉体的な痛みだけでなく、社会的・精神的な不安などにも苦しみながら病気と闘っているという現実を知りました。

 最後に、がん患者のドキュメンタリー映像を視聴しました。乳がんを再発した中学教師が、不安を抱えながらも生徒たちに勇気づけられ、再び教壇に立ちたいと前向きに生きていく姿が描かれていました。教員は、生徒たちに向けて、「がんと闘っている患者を理解し、命の大切さを考えて欲しい。どのように死ぬかではなく、どのように生きるかが大切」という思いを伝えました。

教員からのコメント

yakushizin 「がんは決して特別な病気ではありません。」がんは身近な病気で、一生のうち2人に1人はがんになると言われます。喫煙を避けることはもちろん必要ですが、完全に予防することはできません。しかし、ただ怖いだけの病気でもありません。厳しい病ではありますが、今では全体のおよそ6割以上が治る病気です。早期発見が出来ればもっとたくさんの人が治ります。また、完全には治らなくても、治療を続けながら普段と変わらない生活が長く送れる患者さんが増えてきています。このため、社会全体でがんに関わる様々な問題を解決していくことは、とても大切なことです。
 「人は永遠に生きることはできません。大切なことは、意義ある人生を過ごすことです。」がんは依然人類が克服すべき病気です。しかし一方で、がんは人に与えられた試練でもあります。様々な人生の苦難に対峙することが生きていくということです。わたしたちにとって大切なことは、どのように死ぬかではなく、どのように生きるかではないかと思っています。

 

学生からのコメント

koukousei 今回の高大連携授業を通して、私は医学に対する関心がより一層深まりました。また、これまで「医学」と聞くと、病気やけがの治療のための学問というイメージが強くあったのですが、講義を聞いて、「生」だけでなく「死」を主として扱うことも医学の一つであり、まだまだ知らない一面が多くあるのだと思いました。(森さん:写真左)
 医学部での講義ということでもっと難しい内容の話をされるのかと思っていましたが、先生が私たちでもわかるように説明してくださったので、とても勉強になりました。薬師神先生の講義では、今まで知らなかったがんについてたくさん知ることができたので、これからがんについて何か考える機会があれば、今回教えていただいたことを生かしたいと思います。今回の授業は、貴重な機会になりました。(俊成さん:写真右)