この活動は、忘れられようとしている伝統文化を復権する作業を通して、地域と協働し、地球規模で考えるグローカルマインドを持つ人材を育成することを目的としています。
授業内容
この活動では、学生が主体となり、愛媛県の伝統産業「伊予絣」の藍染めを素材に、幼稚園や小学校などと協働しながら、「藍の抜き染め」を実施しています。将来、幼稚園教諭、学校教員を目指している学生や、幼児教育、地域貢献に興味のある学生が参加しています。 抜き染めは、染み抜きの原理を応用し、藍染めしたハンカチに「ステンシル版画」をのせ、抜き染め剤を用いて行います。学生たちは、実施に向け、クリアファイルを使って「ステンシル版画」の型を製作し、木綿ハンカチを藍染めしておきます。
実施日には、下記の手順で抜き染めを行いました。
- 藍染めした木綿ハンカチに、ステンシル版画を載せて固定する
- 抜き染め剤(台所用漂白剤、でんぷん糊、片栗粉を混ぜた物)を塗る
- ズボンプレッサーで3分間乾燥する
- 洗う
- 干す
抜き染め剤は家庭用を用いるため安全であること、また、ズボンプレッサーの使用により、短時間で効率良くできることなど、実施を容易にする学生の工夫が要所要所で見られます。
この活動では、実施ごとに学生にアンケートを取っており、それをフィードバックした結果、学生の意欲や興味が上がっている様子が見られました。また、最初は興味がなかった学生も、参加を通して「地域性とは?」「伝統とは?」を考えるきっかけとなったようです。さらに、特別支援学校での実施に参加したことで、臨床心理士を目指すことになった学生もいました。
今年度は、これに加えて愛媛県の伝統産業であった綿花栽培、藍染めの元となるタデアイの栽培、新たな継承活動として日本酒造りや甘酒造りなどを行っています。そして現在、愛媛県産の和紙を使用したちぎり絵の企画が進められており、今後伝統継承の幅も広がりそうです。また、学術交流協定校などで行われる海外実習の中に、藍染めの実施を組み込むなどの企画も考えられています。
この活動を通して、学生たちが地域の一員として自覚と誇りを持って行動し、多様な人と協働できるグローカルマインドをもった人材として育成されていくことでしょう。
教員からのコメント
世界について考えるためには、まず自らについて知らなくてはなりません。愛媛大学教育改革経費「伝統の継承を通したグローカルマインドの育成」事業では、学生主体の活動でローカルの極致である伝統文化から自らの来歴を知り、広い世界と対比させることでグローカルマインドを育成することを目的としています。
学生は、多くの人と協働することで将来について考え、新たな技能・資格の修得を目指すなど、自らを知ることで視野を広げています。日本とは何か、世界とは何か、世界規模で考えながら地域で活動するのはどういうことかについて考えるようになりました。学生と地域の輪が世界に広がっていき、地域から世界を、世界から地域を考えられる学生になってくれることを期待しています。
学生からのコメント
藍染めは四国の伝統文化です。近年、藍染めについて知らない子どもたちが増え、四国の伝統文化である藍染めは忘れ去られようとしています。
私は大学生になって、忘れ去られようとしている藍染めの状況を知り、同時に本事業の「伝統の継承プログラムを通したグローカルマインドの育成」について知りました。そこで、藍染めの伝統文化を現在、そして次世代に受け継いでいくために、本事業の参加を決意しました。伝統文化を受け継いでいくためには、まずは知ってもらうことです。そのためには、様々な所で活動を行い、定期的に四国の伝統文化に藍染めがあることを伝えていかなければなりません。
本事業の活動を始めて2年目となり、最近では、様々な幼稚園や保育園から連絡をいただくようになりました。藍染めの伝統文化について少しずつ認知されてきたことを実感しています。伝統文化を復権するには、本事業のような活動を継続的に行うことが重要です。今後も本事業の活動に取り組み、伝統文化の復権に力を入れていきます。そして、子どもたちが地域性を大切に感じる豊かな心を育んでいけるように活動していきたいと思います。
この教育活動は、教員の実績ハイライトにも掲載されています。
教員の実績ハイライトとは、教員の「教育活動」「研究活動」「社会的貢献」「管理・運営」ごとに、特色ある成果や業績を精選・抽出したもので、学内のみならず学外にも広く紹介することとしています。