身体を構成している器官・臓器について、その個々の機能を理解し、また器官と器官がどのように連携して身体機能を維持しているかを理解し、説明できることを目標とした授業です。

授業内容

 この授業は、専門基礎科目の授業で、医学部看護学科の1回生60人を対象に、後学期に全15回の講義が開講されています。
 この授業の目的は、普段は何気なく生存しているヒトの身体が、生体内恒常性(ホメオスタシス)(※1)を保ちながら生命活動を行っていることを理解するというものです。

 令和2年度は、コロナ禍の発生という未曾有の状況の中で、愛媛大学を感染の発生源としない努力を継続しながら、授業については、学生の学びの「場」としてのキャンパスライフの提供に努めることを目標とし、感染防御対策を徹底しながら、対面授業を可能な限り開講しています。この授業においても、ソーシャルディスタンスを確保し、マスク着用、手指消毒の励行など、感染防御対策を徹底して、対面での生の授業を行い、学生の表情や態度を直接確認することで、学生の理解度を把握できています。

 全15回の講義では、血液や神経組織などの小さな器官から、胃、小腸、膵臓、肝臓などの消化器系の臓器まで、身体を構成している様々な器官・臓器について、もれなく理解を深めていきます。
 今回受講した講義では、身近な「汗」についても知識を得ることができました。普段汗の種類を意識したことはなかったのですが、汗にも種類があって、それぞれに汗の性質や汗を出す仕組みが異なります。
 汗は、皮膚にある汗腺という器官から出てきており、汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」があります。エクリン腺は全身のほとんどにあって、主に体温調節のために汗を出す汗腺で、分泌される汗は無味無臭です。一方、アポクリン腺はカラダの限られた部分にあり、特にワキの下に多く分布しており、汗は白く濁っていて、脂質やタンパク質などニオイのもととなる成分を多く含んでいます。細菌も繁殖しやすいので、清潔に保っておく必要があります。
 汗は、温熱性、精神性、味覚性の3つの要因があります。温熱性発汗は、暑い時や運動をしたときに、上昇した体温を下げるための汗、精神性発汗は、人前に出て緊張したときなど、ストレスや緊張など精神的な刺激によりかく汗、味覚性発汗は、香辛料がきいた辛い物を食べた時に鼻や額にかく汗です。興味深かったのは、精神性発汗は、手のひらや足裏、ワキの下など限られた部位で、短時間に発汗するのが特徴であることです。我が身を振り返ってみても、確かにと思い当たりました。
 また、この講義では、人体模型を用いた演習やVisible Bodyなどの視覚教材を用いることによって、関節の動き、筋肉や心臓の収縮などアニメーションで三次元的に学習できるものになっています。この講義での内容は、自分のからだで起きる現象を思い出してみることで、正常な身体の生理的な反応として、思い当たることが多くあるように思いました。

 学生の受講態度は、まさに真剣そのもので、看護識者として、専門分野の学問内容の知識を修得しようと、熱心にメモを取る姿が頼もしく感じました。
 ヒトの身体を構成している器官や臓器について、それぞれの機能を学び、どのように連携しているか、人体構造学と関連させながら理解し、異常が起こった場合、どのような変化が身体内で起こるのかその思考過程を養う基礎知識を得ることが、この講義の目的です。さらに、生命と人間に対する畏敬の念と豊かな感性を基盤とした人間理解ができる幅広い教養が身につくものだと感じました。
 今後、看護識者として、地域医療を支えていく学生たちの真剣な姿勢は、地域で暮らす人々の医療、保健や生活を支えていくのであろうと、その素晴らしい心構えを感じられるもので、心強く思いました。

(※1)生体内恒常性(ホメオスタシス)
生体の恒常性とは、外界の環境の変化に対し、生体を安定した恒常的な状態に保とうとする仕組みで、神経、内分泌、免疫の相互作用によって維持されています。ギリシャ語でホメオスタシスともいい、同一の状態を意味します。生体の恒常性が維持できなくなると疾患に結びつくこともあります。

教員からのコメント

 看護職者は、対象者を身体的、精神的そして社会的側面から看て総合的に評価します。本講義は、身体的側面からみるための基礎的知識を学びます。身体の中では、ホメオスタシスを維持するために常に様々なことが起こっています。運動した後、息が切れる、脈が速くなるなど、自分自身でわかるものもありますが、多くは気づくことなく調節されています。「神経が興奮する」といってもピンとこないのではないでしょうか。その分、難しいと思う学生もいますが、自分の身体のことだと思って学修してもらえたらと思っています。

 医療現場では「異常の早期発見」が重要です。しかし、基準となる状態(正常)がわからないと異常を発見することもできません。今後、様々な疾患や検査、治療のことを学んでいきますが、それらのベースになる知識です。どこか、異常が起こるとそれに伴って別の組織も異常になる、あるいは異常の部分を補おうとして別の臓器が頑張るといったことが、症状や検査データに現れてきます。私たちの身体は1つなので、いろいろな系が繋がっていることを常に念頭において、身体に興味が持てるよう授業を進めています。

学生からのコメント

 本講義では、ヒトの身体を構成する器官・臓器の機能について学ぶことができます。名称のみに留まらず、その機能が障害されるとどのような疾病が起こり得るのかなど、臨床的な内容を知ることができる講義だと感じています。また、寒いときに身体が震えるなど、私たちの身体に起こる何気ない現象に関して、何故起こるのか、それは普通のことなのか等を理解することができる点も本講義の魅力の一つだと思います。生体機能学Iの内容は難しく、身に付けるのがとても大変ですが、将来医療に携わるようになったときに必要になる知識を深めることができていると感じます。