mori_sam この授業は、がん看護と緩和ケアについて学ぶことを目的としています。

 
 
 
 
 
 
 

授業内容

mori_1 今回は「がんの治療とその看護」というテーマで、化学療法・薬物有害反応、骨髄移植について学びました。  化学療法・薬物有害反応についての説明では、まず、皮膚炎が取り上げられました。皮膚炎は、化学療法により角質層の水分保持機能が低下し、皮膚がもつバリア機能が障害された結果、起こりやすくなります。皮膚を清潔に保つなどのケアの他、患者の全身状態を観察し十分把握すること、また、皮膚障害で外見が変わり精神的苦痛を受ける患者も多いため、精神面でのアセスメントが必須となります。

mori_2 次に、倦怠感や末梢神経障害(しびれ)についての説明に移りました。倦怠感には周期性があり、治療開始前までには回復しているケースもあります。一方、末梢神経障害は、一度出現すると長期間治らず、確立した治療法がないため、早期発見早期対策が重要です。症状の軽いうちに担当医に伝えておき、これからの治療をどうするのかを考える必要性が挙げられました。
 そして、患者が女性の場合、妊娠初期に化学療法を行うと、胎児に異常をきたす危険性があるとの説明がありました。今後の家族計画やパートナーとの人間関係に影響を及ぼす可能性があるため、化学療法をする前に、患者にパートナーとの話し合いをもつように促すことも看護ケアの一つとなります。

mori_3 最後に、造血幹細胞移植(骨髄移植)について、患者登録から移植までのコーディネートの流れや、移植を受ける患者の看護などの説明がありました。造血幹細胞移植は、通常の化学療法よりも強い副作用が起こりやすいため、バイオクリーン・ルーム(無菌室)で治療を行います。また、移植片に含まれるドナー由来のリンパ球が、患者の臓器を攻撃・排除しようとする移植片対宿主病について学びました。
 授業の中で、教員は「患者本人しか痛みは分からないので、看護師は患者の言葉をよく聞き、体の状態を観察することが大切」と強調していました。

 

教員からのコメント

mori 成人看護方法論Ⅲは、がん看護と緩和ケアについて学ぶことを目的としています。がんを有する患者とその家族の皆さんを対象に看護の方法を理解し、看護ケアを実践できるための知識(看護理論)・技術・態度について学んでいきます。取材当日の授業は、化学療法による有害事象とそのケアについてと、化学療法と放射線治療の集学的治療である造血幹細胞移植の看護についての授業でした。1年生から学んできた知識と結びつけて辛い治療をしている人々の何を観察し、どう分析し、看護の必要性を考えました。  
 3年後期の成人看護学実習Ⅰでは化学療法や放射線治療を受けている患者さんを受け持つことがあります。看護を実践するために必要な視点が身につけられると、受け持たせていただく方々の看護に活かせるようになると考えています。 

 

学生からのコメント

mori_stu 私は、この講義を通して、病態の理解だけでなく、個人の価値観、思いというものを感じ、その人自身をみて看護をすることが大切なのだと思いました。価値観が違うからこそ、同じケアをしても人によっては捉え方や感じ方が違い、また看護をする上ではその疾患の人への看護ではなく、目の前にいるその人にとって必要な看護が何かということを考えることが、看護への第一歩なのだと学びました。
 また、今回の講義では、看護における倫理的課題についても取り上げられました。日々のケアの中で何か問題が起きても、私たちに倫理的感受性がなければ気付くこともできないとはまさにその通りで、例えば患者さんの意思が尊重されていない看護であっても、看護する側が満足したままケアを行うという恐ろしさを強く感じる内容でした。これを受け、看護師となった時に倫理問題に気づけるように、普段から自らの行動を客観的に振り返る習慣をつけ、倫理的感受性を高めていきたいと思います。