この授業は、算数科教員として、算数の指導に必須の指導理念ならびに学習指導の基本的知識・技能を身につけることを目的としています。
授業内容
取材日の授業は、算数教育における4領域(「数と計算」、「量と測定」、「図形」、「数量関係」)の再確認から始まり、「算数的活動と数学的な考え方」というテーマで進められました。
まず、教員から、算数的活動には操作活動などの「外的活動」と、思考活動などの「内的活動」があるとの説明がありました。「外的活動」とは、おはじきを使って数を数える、長さを測るといった操作的な活動などであり、「内的活動」とは、論理的な思考など頭の中で考える思考です。 低学年から高学年と学年が上がるにつれ、「外的活動」よりも「内的活動」に重きをおき、発達段階に応じた授業を展開していく必要があります。
そして、文部科学省の小学校学習指導要領(算数)解説にある「算数的活動とは、児童が①目的意識をもって②主体的に取り組む③算数にかかわりのある様々な活動」についての説明に移りました。
第6学年の児童に分数小数の演算を教える際、終始ドリル演習をさせるという具体場面を想定し、「この活動は算数的活動と言えるか」と学生に問いかけました。発表を求められた学生は、それぞれの意見とその回答の理由をしっかりと答えていました。
続いて、数学的な考え方について、例えば指数・対数関数(log)を学習する際に、計算方法を習得するだけではなく、文脈や状況の中で、それが何を意味しており、どのように利用できるかといった、数学的な考え方も重視した問題解決的な学習の重要性が挙げられました。
授業の中で、教員から学生に向けて「授業の中で算数的活動は自然と起こっているので、子どもに目的意識をもたせ主体的に学習に取り組ませるということを難しく考えることはない。気負いすぎることなく、想像性あふれる算数的活動を構想してほしい」とのメッセージが送られました。
また、この授業では、課題の提示や授業・課題についての質問に対するフィードバックをMoodle(オンライン学習をサポートするソフト)上で行っており、学生の授業外学習を促す工夫がなされています。
教員からのコメント
この授業は、3回生を対象とした卒業ならびに教諭免許状を取得するための必須の専門教育科目です。教育学部で教諭免許を取得しよう希望するほぼ全ての学生が受講します。大人数の授業のため、課題の提出や授業についての省察等はWebを利用しています。
講義内容としては、算数教育の目的の検討から始まり、これまでの算数教育史・算数的活動・数学的な考え方の理解、そして算数科における授業づくりや評価のあり方などについて考究した後、算数科の4つの領域「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」それぞれにおける学習指導の理論と実践を解説します。
幸い、学習指導のアルバイトと言うと、大抵の場合、算数・数学になりますので、この授業では敢えて理論を中心に講義しています。あるテキストを1章ずつ取り上げ解説しますので、15回の講義で1冊の教育専門書をみんなで読むことになります。参考書も紹介していますので、学生は講義後1週間のスパンで①教員の解説、②テキストの内容、③関連内容についての参考書の記述、④自身の解釈、この4つを資料として自分だけの「算数教育法(ノート)」を作成し、そのノートをもって日々の算数の学習指導やこれからの教育実習に活かすよう、学生に伝えています。
学生からのコメント
この授業ではこれまで、算数教育の目的、目標を検討し、算数教育の歴史などを学習してきました。このような学習を通して、これからの算数教育のあり方を考えています。授業中に多くの具体例が紹介され、学んだ理論が実践につながるような授業の内容となっています。授業中には、学生に自分の考えを発表する機会が与えられ、様々な算数に関する議論を深めることができます。
また、授業外には、Web上で課題を行います。ここでは、実際に子どもたちからの質問に教師としてどのように答えるかなど、現実的で実践的な課題に取り組みます。教員からのフィードバックを参考にしながら、教師としての対応や考え方などを学ぶことができます。 授業中はもちろんのこと、授業外でも学びの多い初等算数科教育法を皆さんも受けてみませんか?