この授業は、ワークショップを多く取り入れたスタイルをとっていて、受講生全員で集団づくりの技能やスキルを習得していきます。その中で、学校で起こりうる事態を疑似体験するアクティブラーニングを取り入れています。
授業内容
今回取材した際には、まず、学生たちが行程を企画し実施するマレーシア修学旅行のプレゼンテーション(事前調査の報告)が行われました。学生たちは、複数のグループに分かれ、各イベントの概要や目的を説明したほか、移動距離等を考慮の上、日程的に実施可能かどうかについても報告を行いました。
続いて、修学旅行に臨む際にどのような集団づくりを目標にするのか、それぞれの意見を持ち寄り話し合いが行われました。集団作りのキャッチフレーズは、「おひたし」(お:お互いに認め合い、ひ:一人ひとりが自信と責任をもって、た:助け合える、し:集団)です。
教員から、集団づくりのルールとして「〜しないルール」ではなく、「〜する、〜を多く行う」といったポジティブルールを設定してみては、という提案があり、学生からは様々な意見が出されていました。中には、「仲間の長所だけでなく、短所も認め合う集団づくり」といった意見や、「学んだ事や得た知識を仲間と共有することでお互いに高め合う集団づくり」といった意見がありました。 このように、学生たちが考えたルールで修学旅行を実施、失敗した点などを修正するプロセスも大切な学びの一つとなります。
最後に教員から、「学生達が話し合った内容や、話し合いの中で消えていった意見や提案なども、最終決定事項の中に含まれているということを、みんなで共有してほしい。そのことを踏まえて、話し合いをコーディネートしていくことが必要になる」といった話がありました。学生たちの主体的な話し合いが行われている中に、教員からのアドバイスが融合し、充実したワークショップが展開されている印象を受けました。
教員からのコメント
この授業は、3年生を中心とした専門科目です。授業では、学校における諸問題の多くが、「学級」や「学校内の集団」に関わっていることを問題として、よりよい集団の形成(学校生活の向上)の在り方を実践的に考えます。特に、(1)教育現場の問題状況を事例として、学級づくりの理論や実践を学ぶこと、(2)世界の学級づくり・生徒指導の在り方について学ぶこと、の二つを通して、最先端の学級づくりの理論と実践を学びます。そして、多様な子どもの観点に立ち、児童・生徒一人ひとりの人格を尊重する実践の在り方を探究しています。
具体的には、(1)については、いじめや子ども間のトラブル、保護者のクレームなど、具体的な問題のケースメソッド(事例からの問題解決型学習)による授業を行い、学生同士のディスカッションを行います。また、実際の学級をマネージメントする教師として、話合い活動や集団学習の方法を実践的に体験しながら学びます。
また、(2)については、いじめや学級づくりの方法について、日本だけではなく世界の教育方法を学び、幅広い視野をもつ教員としての資質能力の向上を図っています。学生達が、海外での教育文化研修を企画し、海外の教育見学や子どもとの交流を含めて、自ら考え、自ら学ぶ体験活動を取り入れていることも一つの工夫です。この手法はアクティブ・ラーニングの一つであり、教育文化研修の企画実施を学生自らで行う中で、「集団思考の方法、集団行動の方法、集団マネージメントの方法」を体験的に学べるようにしています。
この海外教育文化研修は、授業を受けている学生達の希望からスタートしました。学びたいこと、行動したいことを最大限保障すること。そして、最先端の知識や学問の知見をもとに授業すること。すなわち、高校まででは体験できない「主体的かつ幅広く深い学び」を実践的に探究できることを大学では保障したいと考えて、授業や教育にあたっています。
学生からのコメント
学習集団論では、「学級づくり」「特別活動」「修学旅行」について、集団理論を学び、その意義や方法について、学生の話し合いを通して考えていきます。
いじめがない仲のいい学級、みんなが目標に向かって頑張れる学級など、教師には自分の目指す学級像や子ども像があると思います。それらを実現させるために、集団理論をもとに、学習集団化・生活集団化の過程と方法について事例を取り入れながら考え、学ぶとともに、特別活動の意義について知り、教師の力を磨いていきます。
さらに、この授業では、学生自ら場所や日程を企画する修学旅行があります。前年はイギリス、今回はマレーシアに行きました。マレーシアでは、現地の小学校で英語で授業を行うことにチャレンジしました。修学旅行の意義を考えるとともに、多文化を理解する貴重な機会を活かし、私たち自身が集団として高まることを目標としています。教員を目指している人、この授業を受けてみませんか?