この講座は、高校生に工学の基礎となる科学実験を実体験してもらうとともに、現在高校で学習している物理や化学などの知識が、大学でどのように活かされるのかを知ることで、勉学に対する高いモチベーションを醸成することを目的としています。

授業内容

 この講座は、高大連携事業の一環で行われており、今回は、文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定されている愛媛県立宇和島東高等学校の理数科2年生40人が参加しました。
 参加者は、工学部や実験実習センターで、工学部教職員の指導のもと、工学部1年生向けに開発された「工学基礎実験」のテーマのうち、2日間で各1テーマずつを少人数の班に分かれて体験しました。今回実施したのは、①空気の力、②点接触ダイオードとラジオの製作、③自転車の仕組み、④磁場を感じる、⑤ガラスの製作と加工、⑥真空とは何か?、⑦スターリングエンジンに挑戦、⑧豆電球から電子を取り出してみよう、⑨七宝焼き、⑩リサイクル、⑪金属加工の11テーマです。
 その中でも、七宝焼に取り組んだ班は、銅板に七宝釉薬で模様を描き、焼成する作業を行いました。また、蛍光X線分析装置という分析機器を使って、七宝焼の釉薬に含まれる元素を調べ、銅やクロムなど含まれる金属の種類によって釉薬の色が決まることを学びました。分析機器を使用した実験など、大学でしかできない体験をしました。
 また、金属加工に取り組んだ班は、専用の機械を使って、ペーパーウェイトを製作しました。金属材料を平らに削る作業や丸く削る作業を行いました。参加者は、材料の削る位置を微調整しながら、真剣に取り組んでいました。

 最終日には、それぞれが選んだテーマの成果報告を行いました。参加者は、やや緊張した面持ちで、実際に自分たちが実験で作製した装置を見せたりしながら、スライドを使って体験した内容を発表しました。質疑応答の時間には、多くの質問が飛び出し、活発な意見交換が行われ、科学への興味がさらに高まった様子でした。
 この講座を通して、工学部への進学の意思を固めた参加者もいたようです。工学の基礎である物作りの楽しみを知り、工学に対する興味・関心を高める機会となりました。

指導教員からのコメント

 DSC_1934今回、宇和島東高校2年生の皆さんが体験した実験は、工学部1年生の授業で行っている実験を少しアレンジしたもので、科学史上重要な実験の再現実験、基本的な製造方法を学ぶ実験、身の回りにあるものの構造と動作原理を理解するための実験、環境問題に関する基本的な実験の4分野の10種類の実験で構成されています。どの実験も結果を得ることではなく、ものづくりを体験することに重点を置いています。
 私は、実際に自分の手で実験を行うことは非常に大切なことだと思っています。自分の手を動かし、自ら考えることで感覚的に科学現象が理解できたり、これまで全く興味がなかったことに興味が湧いてきたり、ものづくりの楽しさを実感することができたりするからです。この体験を通して、ものづくりに対する好奇心や科学に対する興味が高まり、工学の道を目指す高校生が増えてくれることを願っています。

宇和島東高等学校の生徒からのコメント

sasaki 二日間の実験は、非常に充実したもので、楽しむことができて良かったです。参加する以前から工学部への進学を考えていて、今回の活動を通して、よりその進路に進みたいという気持ちが強まりました。大学生が行う実験を通して、実験結果から物理現象を考察していくためには、物理はもちろん、数学などの知識も必要となるなど、様々な分野の知識がないといけないと感じました。なので、今後の高校生活で学ぶことの一つ一つを大事にしていきたいと思いました。また、物事に対して疑問を持ち、批判的思考力を身に付け、新しいものを作ることができるようになりたいと思いました。