この授業では、肢体不自由児の教育に関する制度や教育課程について説明でき、肢体不自由児の個に応じた指導を立案できるようになることを目標としています。
授業内容
学生たちは、特別支援学校小学部の低学年を対象とした授業の立案に取り組んでいます。今回は、脳性まひや筋ジストロフィーの障害のある児童を想定した模擬授業を行いました。学生は、班ごとに授業者、司会、模擬授業演者(補助者、児童)、記録の役割を分担し、授業後、付箋を活用したKJ法(良い点をピンク、改善点を水色に記入)で、論点を整理しながら協議していきます。
型はめ教材を作成した学生は、児童に形を認識させる模擬授業を行いました。教材は、形が識別しやすいように色分けされており、色は変更できるようになっています。色の概念によって、形の概念が邪魔されないような工夫がされていました。授業中、四角の枠に三角の型がちょうど入り込んでしまうという問題が起き、枠を小さめに作成する必要があることに気づきました。授業後に「教材を出す際に苦労した」といった反省点が挙げられると、教員から、「ついたてを使って教材を隠し、声かけをしながら一つずつ出していけば興味を持たせることができる。時間がかかる子から教材を渡していけばよい」といったアドバイスがありました。
また、絵本に出てくる野菜に着目した学生は、文字に親しむ模擬授業を展開しました。土に埋もれている野菜を当てるクイズから始め、その野菜を抜いて名前を覚えていきます。その中で、自分と反対側に野菜を抜くという作業は、手に緊張のある児童には負担がかかるという課題が出てきました。授業後の協議の中で、実際の野菜を抜くように、自分側もしくは上方向に抜くという改善策が見出されました。教員は、「フェルトが擦れることで摩擦が起き、野菜の重さを体感できる。実物の野菜と調理した野菜との結びつきにも発展させることができる」と助言しました。
授業者は、協議内容や教員からの助言を参考に、修正した指導案を提出します。学生は、この授業を通して具体的な指導方法を学び、未来の教員として活躍していくことでしょう。
教員からのコメント
「肢体不自由児」とはどんな子どもたちなのでしょう。
肢体不自由とは運動障害があり、自ら身体を動かせない状態を指します。子どもたちは発達の過程で手を使い、身体を動かしながら、様々な能力を獲得していきます。では、運動障害がある場合、どうしたら学びを深め、発達を促すことができるのでしょうか。
肢体不自由児は運動機能障害に加え、視覚障害、聴覚障害、知的障害などがある場合も多く、指導内容・方法を考えるときには、各障害に関する知識と技能の融合が必要となります。肢体不自由児への指導を模擬体験することで、発問の仕方、教材の見せ方や動かし方、学んだことを生活の中で活かす方法などを、体験的に学べるようにしています。
また、特別支援学校では多くの授業が、TT(チームティーチング)で取り組まれています。本授業での学習指導案及び教材作成は個々の作業ですが、TTによる模擬授業、授業検討は人との関わりの中で進められます。児童生徒と教員、教員同士のコラボレーションの面白さを疑似体験し、教えることを楽しめるようになってもらえたらと願っています。
学生からのコメント
この授業では、肢体不自由児の障害の特性に応じた支援の方法を学び、学生それぞれが指導案を作成して模擬授業を行います。毎回、学生同士でディスカッションをする機会が設けられているので、それを通して新しい発見をしたり、自分の考えを深めたりすることができます。
指導案検討・模擬授業では、それぞれの学生が考えた指導案に沿って模擬授業を行った後、グループに分かれて授業内容の検討をします。自分の授業の教材や指導の改善点について学ぶだけでなく、他の学生が考えた授業内容の工夫点や改善点についても学ぶことができるので、教材や指導の工夫についてイメージを広げることができるようになります。
また、指導案は、一度書いたら書きっぱなしではなく、授業担当である樫木先生に細かいところまで添削していただいたり、学生同士で意見を述べ合ったりします。授業者がそれを参考にして修正指導案を作るので、自分の考えや学びを振り返ることもでき、指導案を作る前と後で、指導に対する自信を持つことができるようにもなります。
少人数で、先生と学生同士の距離が近いので、毎時間、温かく楽しい雰囲気の中で学びを深めることができます。教育に興味のある受験生の皆さん、ぜひ、愛媛大学で特別支援教育について一緒に学びましょう!
この教育活動は、教員の実績ハイライトにも掲載されています。
教員の実績ハイライトとは、教員の「教育活動」「研究活動」「社会的貢献」「管理・運営」ごとに、特色ある成果や業績を精選・抽出したもので、学内のみならず学外にも広く紹介することとしています。