学生が基礎医学・臨床医学の基礎となる人体全身の構造を局所的ならびに系統的に臨床的な事項と関連付けながら理解することを目的としています。

授業内容

※広報課の職員が実際に受講しました。

この授業は、医学系研究科生体構造医学講座の武内章英先生が講義を担当しており、今回は「神経解剖学」を取材させていただきました。医学の知識を持たない広報課の職員が、どこまで授業の内容を理解できるか不安がありましたが、実際にあった症例や患者さんの病状を例示しながら、どの神経がどのように作用してどういった症状が出るのかについて分かりやすい説明があり、受講に没頭することができました。

受講した「神経解剖学」の回では、末梢神経、脊髄及び脊髄神経節、脳神経12対、および大脳皮質について、各部位の名称や構造、機能の説明に始まり、障害された場所でどのような症状が出るのか実例が挙げられ、解剖実習で学ぶ神経関係の器官への理解を深めていきました。

授業では、体内に存在する様々な神経系の部位について、分かりやすい図解、色分けされたイラスト、漫画に描かれた病状の描写、手術の動画などを用いて、それぞれの神経系が持つ特徴や他の部位との位置関係、相互作用について学びます。脳と神経という人体において重要な場所について、部位ごとであれば構造や機能を覚えやすいですが、多くの部位が連動して複雑になっていく内容を、丁寧に理解していく点が、この授業の特徴です。

武内先生は「病気に関連した様々なエピソードと共に解剖の知識を定着させて覚えて欲しい」と述べ、講義に関連する他の授業・実習の進度や学生の理解の具合を確認しながら、人体構造への理解には不可欠でありながらも膨大な量の神経系の部位を、学生が覚えやすいように、患者さんの症例や実際にあった診療科同士の連携の話を交えながら講義を進めていきます。

「試験に合格するための勉強ではなく、優秀な医師になるために学んで欲しい」という武内先生の言葉のとおり、第一に、脳や神経にとって何が危険か、どのような症状が出ていたらどこの部位にどのような障害が発生しているかを正確に覚えていないと、患者さんを適切な医療へ繋げることができないことを実感し、この講義の重要性を感じました。学生が後に受講する授業や実習への理解が深まるように、重要な事項を説明する際は、今後学生が受講するどの授業や実習と関連しているかを補足している点も印象的でした。

授業全体を通じて、長い時間をかけて人体の構造をひとつずつ丁寧に理解していくことが、患者さんに必要な医療や適切な治療に繋がっていくことへの理解を深めていく時間になっていると感じました。また、学んだ様々な事柄をリンクさせて、他の分野への理解に繋げていくことは、人体構造学だけではなく、学問において共通の必要な姿勢であると強く実感しました。

教員からのコメント

今回講義を行った「神経解剖学」は、「人はどのように感じ、動き、考え、記憶するのか」という生命の根源的な問いに迫る学問です。本講義では、脳や脊髄、神経の構造を学ぶだけでなく、それらがどのように感覚や運動、記憶、言語、感情を生み出しているのかを、医学・生命科学の視点から探究します。さらに、その知識が実際の医療現場で神経系疾患の診断や治療にどのように活用されるのかを、解剖学と臨床医学の両面から学びます。

講義では、中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系の基本構造、感覚や運動の神経回路、12対の脳神経の機能を体系的に理解します。例えば、「なぜ脳卒中で半身麻痺が起こるのか」「脳の障害によってどのように視覚や聴覚、言語機能が失われるのか」といった臨床例を通して、神経の走行や脳機能局在を学びます。また、解剖画像や臨床画像を用いながら、患者さんの症状から障害部位を推定する神経診断の考え方にも触れます。

脳は、頭蓋骨の中に収まるわずか1500グラムにも満たない小さな臓器ですが、感情や記憶、言葉や人格など、人間らしさを支える高度な機能を担っています。一方で、脳は一度損傷を受けると回復が難しく、脳卒中、脳腫瘍、神経変性疾患、認知症、精神疾患など、いまだ十分な治療法がない病気も少なくありません。本講義では、脳神経外科や神経科学研究の視点も交えながら、脳の複雑な構造と機能、そして神経疾患の理解に迫ります。

解剖学は単なる暗記科目ではありません。生命への敬意を学ぶ解剖実習を通じて、医師としての倫理観や使命感を育み、基礎医学と臨床医学をつなぐ「医学の共通言語」として機能する学問です。本講義を通じて、将来の医療や生命科学を担う皆さんに、脳の神秘と医学の面白さ、そして医師・医学研究者という仕事の魅力を伝えられたら幸いです。

受講学生のコメント

医学部医学科 2年生 藤井 義正さん・小田 ひよりさん

講義では、先生が重要なポイントを繰り返し説明してくださるだけでなく、病気と関連付けて解説していただけるため、初学者である私たちにも内容が記憶に残りやすく、理解しやすいと感じています。
教科書の文章は⾧く複雑であるため、読むだけでは内容の理解が難しいうえに、どこが重要なのかも分かりにくく、独学では多くの労力を要しますが、講義で学んだ内容を中心に据えながら教科書を活用することで効率的に、単なる暗記ではない理解の伴った学習ができていると感じています。
(医学部医学科 2年生 藤井義正さん)

藤井さん(左)と小田さん(右)

この講義では、全身の主要な臓器・筋肉・神経・血管などの機能や構造・走行を実習と座学の両面から学ぶことができます。座学で学んだ知識を、解剖実習で実際に自分の手で確認しながら理解することができる貴重な講義です。
取材のあった講義では目や顔面の働きを支配する12脳神経の機能や走行、それらの脳神経が損傷されることによって生じる疾患やその症状などについて幅広く学びました。さらに、脳の構造や大脳皮質のそれぞれ部位で担っている機能について学習しました。講義中はイラストや写真、3Dの映像なども活用してイメージを膨らませながら理解を深めていくことができます。体の構造や神経の走行は疾患や診断、治療に直接的に関係しています。臨床的な分野を学んだり、将来医師として働いたりする上で欠かせない重要な講義だと実感しました。
(医学部医学科 2年生 小田ひよりさん)