アントレプレナーシップとは、「自分で考え、行動し、新しい価値を生み出そうとする力」のことです。起業する人だけでなく、これからの変化の大きい時代を生きていくすべての人に求められる考え方です。
この授業では、ものづくりを「学びの手段」として、アイデアを実際に形にする経験を重視します。作る・試す・直すというプロセスを繰り返しながら、試行錯誤を通じて考える力を養います。また、他者に使ってもらう体験を取り入れ、気づきをもとに改善する力も身につけていきます。
文系・理系を問わず、「自分にもできる/自分で学べる」という実感を得ながら、未来に向けた一歩を踏み出すことを目指します。

授業内容

※広報課の職員が実際に受講しました。

アントレプレナーシップ??その言葉の意味を反復しながら、6月のある日、18時少し前に6限の授業に向かいました。夏のはじまりの夕方、外はまだ明るく、なんだかワクワクする時間です。
教室に入ると、2つ並んだモニタに外国人の先生(Rajesh先生)が映っており、その前で石原先生が画面越しに会話をしていました。学生さんたちは、ボール紙などでできた作品のようなものを大事そうに抱え、前の机に並べていきます。配線も見えます。グループで何かを製作し、提出しているんだな、と推察しました。

18時になり、授業が始まりました。モニタの向こうのRajesh先生が、スライドを説明します。はじめに、Reflectionということで、何人かの学生さんがこれまでを振り返って3つのことに応えていきます。新しく学んだこと、身についたと感じる能力、もっと取り組みたいこと。それに対して、画面越しの先生がコメントしていきます。英語です。40人程の学生さんは、黙ってうんうんと聞いています。みんなすごいな。途中、モニタの横に、同時通訳の画面が表示されていることに気づきました。なるほど!!

次に、10のグループが順に、自分たちが作った作品とそれを紹介する動画を英語でプレゼンしていきます。テーマは「ペットに役立つもの」。犬が近づくと、センサーが反応し、箱の中の飾りがくるくる回る(犬が喜ぶ)もの。ハムスターが回し車で走ると、エサが自動で出てくる(ハムスターが喜ぶ)もの等々。これまで製作経験のない学生さんたちが、スケッチし、CADを使って設計し、電子回路を学び・・・試行錯誤を繰り返しながら、ここまでたどり着きました。今日は9回目の授業です。なかなかの成果です。担当の2人の先生も笑顔で拍手を送ります。また、授業を見守っているTA(Teaching Assistant)・SA(Student Assistant)の学生さんも安堵の表情を浮かべていました。TA・SAの皆さんのサポートがあって、成り立っている部分も大きいのだと実感しました。

発表している様子は、スマホで録画され、その映像はZoomを通して、皆さんの手元のパソコンに映し出されていました。高校生の皆さんや本学の学生さんにとっては、よくある風景なのでしょうが、取材した私の学生の頃には考えられなかったことです。授業のスタイルから内容に至るまで、私にとっては、ほぉぉぉ!と思うことばかりでした。

発表のあとにはRajesh先生の講義があり、最後に次週からの製作テーマについての説明がありました。次のテーマは水。水に関連する課題を見つけ、解決するためにリサーチをし、作品を設計、製作する、という指示のようです。どんな作品が生まれるのでしょうか。学生の皆さんの頭には、もう次のアイデアがあるのでしょうか。

最後にもう一度Reflection。3つの項目に応えていきます。画面越しにRajesh先生と笑顔で手を振り、授業のような授業でないような、不思議な時間が終わりました。新しいな、というのが率直な感想です。共通教育の授業ですから、学部学科問わず、誰でも受講できます。高校生も受講できます!ものづくりを通して、仲間も作れるし、英語力も養われます。一石何鳥にもなる、有意義な授業を、多くの皆さんに受けていただきたいと思いました。

後日談

2週間後の同時刻、野村先生が不意に広報課を訪れました。「これから授業が始まるんだけど、今回の作品がすごくいいんだよ。これも撮影してほしいよ!」とのこと。カメラを持って、駆け付けました。水をテーマにした製作。前回より大きくレベルアップしていました!
土の乾きを感知して自動で水やりをする装置、雨水を貯めて災害時に自動的に有効活用できる装置等々。短期間での皆さんの成長が伝わってきました。野村先生の興奮した様子も印象的でした。

教員からのコメント

野村信福 教授
石原裕香 准教授

「大学の授業」と聞くと、教室で先生の話を聞き、ノートを取るイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、この「アントレプレナーシップ入門Ⅰ」は少し違います。私たちは、この授業を「作りながら学ぶ」実践型の授業として実施しています。
授業では、米国ボストン在住のRajesh Nair先生とオンラインでつながり、世界12か国・4,000人以上の若者に提供されてきたZero2Entrepreneur(Zero2Maker)プログラムを活用します。英語で進行する場面もありますが、同時通訳機能を活用しながら進めるため、高校生でも安心して参加できます。
受講生は、3DプリンタやCAD、電子工作、各種センサー、マイコン(Arduino)、AIを活用したプログラミングなどの技術を学びながら、自分たちで考えたアイデアを実際の「モノ」として形にしていきます。そして、作って終わりではなく、実際に使ってもらい、改善を重ねながら、より良いものへと発展させていきます。大学での学びは、正解を覚えることではなく、自ら課題を見つけ、試行錯誤しながら解決策を創り出すことにあります。この授業では、そのプロセスを実体験として学ぶことができます。

さらに、本授業は愛媛大学の「YURUGAS(ゆるがす)」の教育プロジェクトの一環として実施されています。YURUGASには、「その発想が、社会を揺るがす」という思いが込められています。社会課題を発見し、アイデアを考え、試作品を作り、仲間と協力しながら新しい価値を生み出していく力は、将来どのような進路に進んでも役立つ重要な力です。高校生の皆さんには、「自分には難しそう」と思わず、ぜひ挑戦してほしいと思います。知識や経験は必要ありません。大切なのは、「やってみたい」という気持ちです。大学には、自分の興味や好奇心を思い切り試せる環境があります。この授業を通して、皆さんが未来を切り拓く第一歩を踏み出してくれることを期待しています。

受講学生のコメント

教育学部言語社会教育サブコース 2年 宮川結有さん

アントレプレナーシップ(起業家精神)ときくと、起業するために必要なことを学ぶ、起業を目指す人のための授業だという印象を持つかもしれません。しかし、この授業では、未知の領域へ挑戦することや課題解決力を身につけることを目的としています。授業では、ペアやグループで話し合い、協力しながら製品を制作します。例えば、ペットのおもちゃを制作するプロジェクトでは、対象の動物、使用する場面などを想定し、プログラミングソフトや3Dプリンターを活用して制作します。完成したものはプレゼンテーションとともに発表し、自分の活動、失敗した点について記録します。はじめは制作に必要なプログラミングや設計などを学びますが、プログラミング技術の習得を目的とした授業ではないため、専門的な知識がなくてもグループで協力して取り組めました。ものづくりを通して、新しいことに挑戦する力や協働する力を身に付けられる授業です。

工学部工学科 1年 河村咲希さん

この授業の最大の魅力は、知識の習得だけでなく、自分のアイデアをゼロから形にする挑戦ができる点です。最初は電子回路やプログラミングの専門知識が全くない状態からのスタートでしたが、実際に触れてみると、難しそうに思えた道具も自分のアイデアを実現する手段なのだと実感しました。
授業でペットのおもちゃを作るという課題が出たときはチームで「ハムスターの滑車の回転数に応じて餌が出る」という装置を作りました。制作は修正しても思い通りにいかないことの連続で、エラーと向き合い、何度も試行錯誤を繰り返す時間は大変でした。しかし、AIを使い、試行錯誤し、アイデアが納得いく形に仕上がった時の達成感は、何ものにも代えがたい「苦労が報われる瞬間」だと感じました。この授業を通じて「どんなアイデアでも形にできる」という確かな自信が身につきました。ものづくりに興味がある人は、ぜひこの授業を履修してみてください。

工学部工学科 1年 近名悠真さん

アントレプレナーシップと聞くと起業するための講義なのかなと思ってしまうかもしれませんが、実はそんな堅苦しいものではありません。私は担当の先生から「アントレプレナーシップに参加しないか?」と言われて、深く考えもせず気軽に参加しました。講義では今まで体験したことのないものを体験できて、講義が終わると必ず自分の成長を実感できます。これがアントレプレナーシップの魅力です。私は講義に参加する前は自分でプログラミングをしたり、3DCADを使って物を設計したりすることはできませんでした。しかし、講義で先生方が親切に作り方、考え方を教えてくださるおかげで今は難なく使いこなせることができるようになりました。今となっては自分が日常生活で使えそうな物を3DCADを用いて形にしています。また、グループで一つのプロダクトを作るという講義もあってコミュニケーション能力や協力することの大切さなどを学ぶこともできます。頭で考えたことを形にすることで、講義で学んだことを応用する能力も培うこともできます。私はアントレプレナーシップに参加したことで人生の視野を広げられたと感じています。何か新しいことをしたい人、チャレンジをしたい人などにはもってこいの講義となっております。ぜひ勇気を出して参加してみてください。