この演習は、地域や学校の特色を生かした実践的な学びを通して、一人ひとりに向き合う指導力や地域への愛着を感じ、地域社会で主体的に活躍できる教育人材の育成を目指します。特に今回の集中講義は、「高等学校の地域における役割とリーダー育成」をテーマに協働的に学ぶものです。
授業内容
※広報課の職員が実際に受講しました。
今回取材に伺った集中講義は、内子町立大瀬小学校・大瀬中学校で開催されたオープンスクールデイに合わせて行われました。本学学生(今回は全員1年生)に加え、伊予高等学校、小松高等学校、丹原高等学校の教員志望の高校生も参加し、本学学生と高校生が一日を通して行動を共にしながら、地域の教育現場や地域振興について学びました。私は午後からの活動に同行し、大瀬小学校と大瀬中学校のそれぞれの学校で学ぶ学生を取材しました。
大瀬小学校での学び
私が現地に到着したのは昼休みの直前で、教室で活動していた学生は、昼休みになると小学生たちと一緒に校舎の外へ出ていき、「ケイドロ」を始めました。全員が全力疾走で、途中からは先生方も加わり、校庭には賑やかな声が響き渡る笑顔あふれる時間でした。
学生は子どもたちと一緒に遊びながら、自然な形で関係を築いていました。
次に学生は、小学校を離れ、大瀬地区について学ぶために、「大瀬自治センター」と「大瀬の館」を訪問しました。地域振興に取り組む方々から、人口減少などの課題を抱えながらも地域の魅力を発信し続ける取組や、地域住民による交流拠点の活用事例について生の声を聴き、大瀬地区の取組について学びました。
再度小学校に戻り、ワークショップを実施するために体育館に向かいました。この日の取材で最も印象に残ったのは、ワークショップの準備時間でした。ワークショップは前半を大瀬小学校の先生方が担当し、後半を本学の学生が中心となって進めるものでした。開始前、学生は自然と集まり、相談を始めます。
「予定通り進める?だいぶ打ち解けてきてるから、後半は参加側じゃなくて生徒たち(小学生と高校生)のグループの補助をしようか」
「アイスブレイクを短くしてワークショップの時間を増やした方が良いんじゃない?」
それまでの活動で見た小学生たちの様子を振り返りながら、自分たちなりの答えを探していました。
そこには、決められたプログラムをこなそうとする姿ではなく、「子どもたちにとって何が良いだろう」と考える姿がありました。大学1年生とは思えないほど、子どもたちの様子を観察し、学生同士で意見を出し合いながら、その場に応じた進行を行っていました。
また、現役の先生方へのインタビューが行われました。
先生方からは、
「人数が少ないからこそ、一人ひとりの子どもを丁寧に見ることができる」
という小規模校ならではの魅力が語られました。
一方で、
「大規模校と比べると、多くの意見に触れる機会が少なくなる」
という課題についての率直な意見も語られました。
また、学生から
「先生のモチベーションは何ですか」
という質問が投げかけられると、
「生徒ができなかったことをできるようになっていく姿を見ることです」
という回答が返ってきました。 その言葉に、多くの学生たちがうなずいていた姿が印象に残っています。
大瀬中学校での学び
大瀬中学校では高校生と大学生はグループに分かれ、3つの部屋にいる大瀬中学校の現役の先生方からお話を伺いました。
1つ目の教室では、先生が自身の経験を交えながら教員を目指したきっかけを語り、教員を目指す学生の意欲を高めていました。
2つ目の教室では、教職2年目の先生が仕事の魅力について話し、学生は自分たちと年齢の近い先生の話に耳を傾けながら、少し先の自分の姿をイメージしているようでした。
3つ目の教室では、授業の準備における生成AIの活用について紹介していました、生成AIを用いて授業資料のたたき台を作成し、AI特有の誤りがないかを確認するために、内容や出典を必ず確認することを心掛けていると話していました。
学生たちは、それぞれの先生方が持つ想いや工夫に触れながら、教員という仕事への理解を深めていました。
取材の最後に
大瀬小学校と大瀬中学校の校長先生にお話を伺うことができました。
大瀬小学校の校長先生は、
「松山市内から、大学生が来てくれることは子どもたちにとって大きな刺激になる」と話され、「コミュニケーション力も学力の一つですからね」と語られていました。
一方、大瀬中学校の校長先生は、
「山村地域を訪れることは大学生にとっても良い経験になる」と話され、子どもたちに多様な体験を届けるために教員や大学生も含めた大人たちが協力し合い、また、大学生自身にも地域ならではの学びを持ち帰ってほしいという期待が語られました。
今回の取材で印象に残ったのは、学生たちが地域の教育現場を見学していたのではなく、その一員として関わっていたことでした。子どもたちと遊び、地域の方々の話を聞き、現役教員と対話する。その一つ一つの経験を通して、学生たちは教師という仕事について考えていました。
教育学部1年生の学生たちにとって、この日の経験は、未来の教員への第一歩となる貴重な学びの機会になっていたように感じました。教育実習とは別に実際の教育現場に赴き、地域と現場の生の声に触れながら学ぶことができるこの講義は、教員を目指す多くの皆さんに参加してほしいと感じました。
教員からのコメント
この授業(演習)は、特に愛媛県内にある人口減少加速度が高い地域に出かけていき、そこで行われている学校教育や地域教育について、実際に見学したり体験したり、課題解決活動を地域の方と一緒に行ったりすることを通して、地域の良さや魅力、課題を知るとともに、「地域を愛し、地域に愛される教員」の育成を目指して行われています。
今年度(令和8年度)も、紹介していただいた県内高校生とのバスツアーで訪問した内子町をはじめ、愛南町、宇和島市、松野町、鬼北町、大洲市、久万高原町、西条市など県内各地において、全部で15を超える様々なテーマ・タイプの演習コースを設定し、教育学部の1年生が履修しています。
将来、教員を目指す学生にとって、「先生になりたい」と思ったきっかけは、その多くが、自分の母校での恩師との出会いやそこでの貴重な経験や思い出です。それはとても大事なことなのですが、自分では当たり前だと思っていた学校の規模や様子、行事や授業も、他の地域では全く異なるものです。現在も増え続けている小規模校と言われる学校では、複式で授業が行われていたり、地域の方々の協力なしには学校教育活動が成り立たなかったりする学校もあります。
また、少子化・高齢化が進み、地域の産業や文化が衰退の危機を迎えていても、住民やそこに関わる人たちの創意工夫と努力によって、魅力あふれる街づくりや人づくりをしている地域もあります。
自分が生まれ育った地域とは、異なる環境の地域に出向き、そこで行われている授業を参観したり、地域での学びに触れたりすることは、学生にとって価値観を揺さぶられるほど大きな衝撃となるようで、地域の温かく豊かな教育現場を肌に感じることで、さらに教師になりたい、という思いを強くする学生が多くいます。
愛媛大学教育学部では、入学後のできるだけ早い段階で、そのような経験を積むことを重視しており、令和6年度からこの演習を始めました。愛媛大学教育学部と言えば、多様な実習が多くあることと、この「地域創生教育」科目が充実していること、が認知されてきています。
最後に、今年度初めて、「地域教員希望枠」入試を10月に実施します。愛媛県で教員になることを強く志望している受験生が、この入試を合格した暁には、上記で紹介した「地域未来教育演習」を含む、「地域創生プログラム」を履修することになります。主体的に地域と向き合い、地域のために、地域で力を尽くせる質の高い「自立した」教員を育成するプログラムです。
今後の教育学部の展開も、ぜひご期待ください。
受講学生からのコメント
教育学部教育発達実践コース小学校教育サブコース1年 山内 瀬菜さん
私が見させていただいた1年生のクラスでは大瀬小学校の谷水先生が、生徒と積極的にコミュニケーションを取りながら生徒と向き合っているように思いました。クラス全体を見渡し視野を広く保つことで生徒だけでなく、私たち実習生にも気を配っていただきました。今回学んだ授業中の生徒との関わり方や、どのように学習を進めていくのかというのは実際に現場に行かないと知ることが出来ないなと思いました。
もちろん講義で学ぶ授業で大切なことや、気を付けなければいけないこともあると思います。けれど実際に現場に行き生徒や先生方とかかわると、「思っていたのと違う」ということがたくさんありました。自分たちで活動内容を考え、活動を行うことで臨機応変に対応する力や多くの学び、想像力を得ることが出来ると思います。
この地域創生で行われる実習は、地域の問題や利点に触れながら身近に教育について知ることが出来ます。将来教員になりたいという人だけでなく、教育分野に興味がある人はぜひ参加していただきたいです。













