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地球深部ダイナミクス研究センターの大内智博助教らがマントルの新しい流動モデルを発表しました
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大内GRC助教

 地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の大内智博助教、入舩徹男教授(東京工業大地球生命研究所兼任)、高輝度光科学研究センターの肥後祐司研究員らの研究グループが、地球マントル上部のダイナミクスをコントロールする新しい流動モデルを発表しました。
 地球のマントル上部(深さ60−410キロメートル)は、1400℃に達する高温の世界で、岩石はゆっくりと流動しています。そのマントルに浮いている私達が住む地表のプレートは、マントルの流れと共に動いたりマントル深く沈んだりします。
 1970年以降45年間、マントル上部の流れは、カンラン石結晶内部の欠陥構造(転位)が原因で起きるとされる転位クリープというモデルであらわされる説が支持されてきました。この説では、マントルを構成している主要鉱物の個々のカンラン石粒子が変形することによってマントルが流動すると考えています。しかし、この説には、マントル上部の粘性は深さによらずほぼ一定であるという観測結果を説明できない問題点がありました。

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SPring-8に設置した世界最大の高圧変形装置

 大内助教らの研究グループは地球マントルの流動モデルを再検討するために、大型放射光施設SPring-8の強いX線と、ここにGRCグループが設置した超高圧下での変形実験を可能にする装置を用いて、高温高圧下でのカンラン石の変形実験を行いました。この結果、マントル上部の流動は転位クリープではなく、カンラン石の粒子間のすべり(粒界すべり)によって起きる可能性が強いことが明らかになりました。この粒界すべりモデルでは、マントル上部の粘性がほぼ一定であるとする観測結果もうまく説明することができ、長年信じられてきた転位クリープ説を根本的に見直す必要があることを示しています。
 マントルの流動によるプレートの移動や沈み込みに伴って、地震や火山活動などの自然現象がもたらされます。本研究で得られた粒界すべりによるカンラン石の流動に関する理論式は、このような地球内部のダイナミックな挙動と進化を理解する上で非常に重要になると考えられます。
 本研究は、アメリカ科学振興協会(AAAS)が発行する総合科学誌Science Advances誌の10月2日版でオンライン発表されています。

block_69617_01_M 理論モデルから計算される上部マントルの粘性と観測結果の比較。粒界すべり理論に基づいた計算結果(赤色塗りつぶし部:赤太線は無水マントル;赤細線は含水マントル)のうち、特に無水マントルの計算結果が後氷期地殻隆起の観測結果(灰色部)と良い一致を示している。計算では、深さによらず応力が一定、ならびに、鉱物粒子は上部マントルの典型的なサイズ(1-10mm)と仮定した。

 

 

掲載論文

Ohuchi, T., Kawazoe, T., Higo, Y., Funakoshi, K., Suzuki, A., Kikegawa, T. and Irifune, T., Dislocation-accommodated grain boundary sliding as the major deformation mechanism of olivine in the Earth’s upper mantle, Science Advances, 1, e1500360, doi:10.1126/sciadv.1500360, 2015.

参考HP

発表論文
Science Advances
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター