2年次開講の「フィールド実習」のプレ・ステージとして位置づけられ、主体的・能動的な態度と課題発見のための基礎力を身につけることを目的としています。さらに、異なる専門分野に進む学生で構成されるグループでの調査活動により協調性を身につけ、分野を超えた連携の意義を学びます。

授業内容

 フィールドワークは社会共創学部の主要科目。この授業では、学科・コースを越えて編成された1グループ5~7人で、①産業、②自然環境、③文化・歴史、④観光・スポーツの領域から愛媛県内の4カ所を選定し、後学期にわたりフィールドワークを実施してきました。学部全体の報告会を前に、岡本先生が担当する6班31人の報告会を取材しました。

伊予かすりの伝統について発表

伊予かすりの伝統について発表

 各グループ10分程度のプレゼンテーションでは、動画の挿入や数値での根拠付けなど、伝え方にそれぞれ工夫を凝らしていました。
 松山城をフィールドに松山の歴史と発展について調査したグループは、山の上に立つ城までの坂道と城内階段の急こう配について報告。そして、今後一層の高齢化の進行を見込み、バリアフリー観光地づくりを提案しました。観光庁が普及を進めるユニバーサルツーリズムについて事前調査を行っていたことが、提案の方針を決定するキーとなったようです。

 伊予市の農水産加工会社「オカベ」をフィールドに品質管理や事業拡大について調査したグループは、業界で初めてHACCP(ハサップ)を取得したという衛生管理の手法に着目。日本での全面義務化が近づくHACCPは、地方の中小企業が必ず直面する課題です。“今”だけではない“未来”を想定した課題の着眼点に注目を集めていました。

フィールドワークの様子

 全グループの発表後、意見交換に移りました。松山の景観改善を提案したグループに対し、「松山ならではの景観を残した工夫も大切では?」との意見があり、答えが一つではない地域課題の奥深さを再認識したようでした。また、「事業の失敗例を挙げたグループがほとんどで、成功例を挙げたのは1グループだけであった」との感想もあり、学生は他グループの発表を多面的に、視野を広く聞いているという印象を受けました。

 最後は、岡本先生による講義でした。フィールドでの姿勢について、「行動・体験自体が目的になってしまわないよう、『課題はそもそもなんだっけ?』と視点・観点を整理することが大事」と説明があり、また、分析における必須事項として、規程・認定の影響や定数・定量比較が挙げられました。

 1年次の早い段階からフィールドに飛び出し、専門の違う学生と共に課題に対峙することで、これまでの「当たり前」が覆されたり、問題意識を越えた新たな発見があったりしたようです。まだまだ粗削りな部分はあるけれど、将来の愛媛を担う人材がここから生まれようとしていました。

翌週に行われた全体発表。前回授業からブラッシュアップされた発表で、学部生全181人で共有し合いました。2年次の実習に向けて、準備が整った様子。

教員からのコメント

6aaa_2995 大学の授業のイメージはどのようなものでしょうか?おそらく教室で受講する「講義」を想像するのではないですか?講義などで知識やスキル、考え方などを習得するのは非常に重要です。それとともに必要なのは学外に飛び出し、実際の現場に出かけて学ぶ「フィールドワーク」です。社会共創学部では、フィールドワークを講義との「両輪」と位置づけ、重視しています。その第一歩が「フィールド基礎実習」です。
 社会は「粘り強さ」「コミュニケーション力」「主体性」「チームワーク力」「課題発見力」のある人材を求めていると同時に、大学生など若者にはこれらの能力が不足していると認識しています。これらの能力を実践的に身につけることができるのがフィールドワーク科目です。社会共創学部では、1年次からフィールドワークに取り組み、4年後に卒業するときには、これらの能力を社会が求める以上の水準に高めることを目標としています。
 フィールド基礎実習では、学科を超えた多様なメンバーが集い、自分たち自身で計画・準備・実行し、初めて出会う現場の様子・ひと・ものから課題を見出し検証し、報告する過程を通じて、学生たちは自分たちに不足している能力あるいは知識・スキルを実感します。そしてそれらを次のフィールドワークや講義で補い高めていく必要性を認識し行動に移します。大学生活の4年間を充実したものにするための良いスタートを切るきっかけを作ることができる、これがフィールド基礎実習の最大の魅力ですね。

 学生からのコメント

7aaa_2945 フィールドワーク基礎実習の一番の特徴は、実際に講義で学んだフィールドワークの手法が実践できることです。社会共創学部の中には4つの学科がありますが、違う学科の学生と一緒にフィールドワークを行うことになりますので、学科それぞれの違う観点から、物事を捉えることができます。また、普段話さない学生とコミュニケーションをとるわけですから、当然、コミュニケーション能力が身に付きます。自分達で計画を練り、自分達だけで行動し、調査を行う。ただ、これだけのことですが、座学では感じ取れない新鮮な学びを得ることができます。愛媛大学社会共創学部では、面白い発見があります。ぜひ、実践できる学びというものを体験してください。